『ラフィキ ふたりの夢』


井手口満(聖パウロ修道会)

最近、『ある少年の告白』(監督:ジョエル・エドガートン/2018年/アメリカ)『君の名前で僕を呼んで』(監督:ルカ・グァダニーノ/脚本:ジェームズ・アイヴォリー/2017年/アメリカ・ブラジル・イタリア・フランス)『Girl』(監督:ルーカス・ドン/2018年/ベルギー・オランダ)、『彼らが本気で編むときは、』(監督:荻上直子/2017年/日本)などLGTBの映画が目に留まるようになりました。

この『ラフィキ ふたりの夢』はカンヌ国際映画祭史上初のケニア作品(ある視点部門)として選ばれたのですが、当のケニア国内では、法律で同性愛行為が忌むべき犯罪であるため上映はわずか1週間限定(米アカデミー賞へのエントリーを満たすため)となった作品です。

ナイロビに住むケナ(サマンサ・ムガシア)は、友達と街角の売店で世間話をしていたのですが、そこへゲイと噂をされている青年が通ります。ケナの友達は彼に対して悪口を浴びせます。ケナは、そんな彼らに対して違和感を覚え、彼らと別れ父親(ジミ・ガツ)が営む雑貨屋の手伝いに出かけます。ケナの両親は離婚しており、彼女は母親と暮らしていましたが、国会議員選挙に出馬した父親を応援してもいました。そんな中ケナは、父親と対立候補のオケミ(デニス・ムショカ)の娘ジキ(シェイラ・ムニヴァ)とその友達がふざけて父親の選挙ポスターを破くのを目にし、彼女たちを追いかけていくのですが、途中であきらめ引き返してきます。

ある日、ケナがいつものように父親の店の前にいると、ジキがポスターを破いたことを謝りに来たのがきっかけとなって、二人は友達になり次第に惹かれあうようになります。二人は、町が一望できるアパートの屋上に上り、ケナの看護師になりたい夢、ジキの海外に行ってもっと世界を見たいという将来の夢について語り合います。そして、彼女たちは見つめあいながら「私たちは本物になろう」と誓い合います。

すっかり仲良しになった二人は、いつも一緒でした。ジキは、ケナが他の男友達とサッカーをしているところへ観戦に行き、「ケナだって一緒にゲームをやっているじゃない、私も仲間に入れて」と言いながら、迷惑そうな様子を浮かべる彼らと一緒にゲームをします。ちょうどその時、雨が降ってきて二人は、走って廃車を改造したケナの秘密の場所へと雨宿りに行くのです。二人は、戸惑いながらもクッションの上に横たわり雨が止むのを待つのでした。
数日後、ケナとジキは遊園地に出かけ、日が沈む頃にはディスコに行き、二人の時間を楽しみます。ケナは、ジキの「本物のデートだったら、何をしたい」という質問に「ドライブをしたり、星を見たり」と言ながら唇を交わしたのでした。

この映画のタイトルの「ラフィキ」は、スワヒリ語で「友達」という意味ですが、同性愛者がパートナーに対して使い、間柄をぼかして使っています。映画の中で彼女たちは、社会的な迫害を受けるとともに、教会の中で「悪魔がついている」ということで司祭から「浄め」の儀式を受けるシーンがあります。彼女にとって信仰のよりどころである「教会」からも拒否され、町のみんなからも白い目で見られるのです。二人が誓った「本物になろう」という言葉は、LGTBの方々の心からの叫びなのではないでしょうか。私たちは、一人では生きていけません。『ラフィキ ふたりの夢』は、たまたま、愛した人が同性であった、彼女たち彼らの真実の愛を描いた映画と言ってもいいでしょう。

11月9日(土)シアター・イメージフォーラム他全国順次ロードショー

公式ホームページ:https://senlis.co.jp/rafiki/

監督・脚本:ワヌリ・カヒウ
出演:サマンサ・ムガシア/シェイラ・ムニヴァ
2018年/ケニア、南アフリカ、フランス、レバノン、ノルウェー、オランダ、ドイツ
原題:RAFIKI/82分
配給:サンリス©Big World Cinema.


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

19 − seventeen =