自分の進路に迷いが生じ、いつも何かにイライラした経験がありませんか。そして、周りの人がすべて嫌になっているにも関わらず、外に出ることも出来ない自分に嫌気がさしているという経験はいかがでしょうか。そんな青春を送っている少女が主人公の映画が間もなく公開されます。
カナダの海辺の町で暮らす17歳の少女レオニー(カレル・トレンブレイ)は、高校卒業を1ケ月後に控えています。今いる退屈な街を飛び出したくて仕方がないけれど、何をしたいか分かりません。口うるさい母(マリー=フランス・マーコット)も気に入りませんが、それ以上に保守的な発言で人気を呼んでいるラジオのDJで、義父のポール(フランソワ・パピノー)のことが大嫌いです。レオニーが唯一信頼しているのが、父親シルヴァン(リュック・ピカール)です。理想主義者のシルヴァンは、工場でストライキが起こったときには労働組合の代表者となり、人々のために働きますが、そのせいで今は遠い街で働かなければならなくなっていました。
ある日、友達とたむろしていたダイナーで1人食事しているひげ面の無口な中年男に興味を持ちます。友達は、あか抜けない様子をからかいますが、レオニーはなぜか気になります。別の日、同じダイナーで彼を見つけたレオニーは思いきって話しかけます。彼の名はスティーヴ(ピエール=リュック・ブリラント)、母親と暮らしながらギターを教えていました。これまで何をしても長続きしなかったレオニーがスティーヴにギターを教えてもらうことになります。
スティーヴは、これまで出会った大人とは違っていました。誰に対しても怒らず、静かに現実を受け入れていく姿に、レオニーは なぜか穏やかな気持ちになることができました。学校でも、家でも、ポールのコネで決まった野球場のアルバイトでも、毎日つまらないことだらけですが、スティーヴのもとでギターを弾いている時間がレオニーにとって大切なものになり始めます。
そんな中、シルヴァンが久しぶりに帰ってきます。父親と過ごす時間の中で、孤独なのは自分だけではないということを知り、レオニーの心は少し軽くなっていきます。
卒業パーティの夜、レオニーはスティーヴを誘って街に出ます。ライブを観、ビリヤードをして、ゲーム用のバイクにまたがり、デートのような一夜を過ごし、気がつくと朝を迎えていました。家に帰ると、ポールが父親風を吹かし、接してきます。その態度が我慢ならなくなったレオニーは感情を爆発させ、本心をぶちまけます。そんなレオニーの態度に、母親が父親と別れた本当のわけを曝露します。信じられない話に父親だけでなく、スティーヴに対しても冷たく当たり、自分の殻に閉じこもってしまいます。さて、このあとは映画館で観てください。レオニーは立ち直ることができるのか、スティーヴとの関係は? レオニーは自分の道を見つけることができるのか、などなど。
この映画の原題は、日本語に訳すと『蛍はいなくなった』です。なぜ蛍なのかも映画の中に示唆されています。蛍のほのかな光がきっとあなたの中にも息づくはずです。
(中村恵里香/ライター)
6月15日(土) 新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
公式ホームページ:http://sayonara-leonie.com
監督:セバスチャン・ピロット
出演:カレル・トレンブレイ/ピエール=リュック・ブリラント
2018年/カナダ/英題:The Fireflies Are Gone/96分/ビスタ
配給:ブロードメディア・スタジオ ©CORPORATION ACPAV INC. 2018