ちえりとチェリー


東日本大震災から早8年のときを迎えようとしています。大切な人をなくした悲しみは、何年経とうと消えるものではないということが、伝えられています。映画作品の中にも、ドキュメンタリーだけでなく、さまざまな形で、大切な人の死とその死の受け止め方が描かれています。ただ、東日本大震災をテーマにするのではなく、本当に大切な人をなくした一人の少女の悲しみと命の大切さ、想像力の可能性を描いた作品『ちえりとチェリー』という長編パペットアニメーション映画が公開されています。

小学校6年生の女の子、ちえり(声:高森奈津美)は、幼い頃に父を亡くし、母親万里恵と2人暮らしです。母親はちえりとの生活を守るため、忙しく、話し相手になってくれず、淋しい生活をしています。そんなちえりの唯一の友人が父親の葬式のときに祖母の家の蔵で見つけたぬいぐるみのチェリー(声:星野源)です。

ちえりは想像力豊かな子どもです。彼女が空想することがすべて現実となり、いいことも悪いことも彼女にのしかかってきます。
ぬいぐるみのチェリーは、そんなちえりにとって、空想の中では、父親の代わりになって、ちえりと話し、遊び、助言し、守ってくれる存在です。

ある日、ちえりは父親の法事のために、久しぶりに祖母の家に行きます。法事に行くことを拒否したちえりは、チェリーとともに祖母の家でお留守番になります。そこで、野良犬が出産しようとしていますが、難産のため、子犬の命が消えようとしています。

そこへ、子犬を狙ってカラスが襲ってきたり、謎の怪物「どんべらべっこ」が登場したり、ちえりを翻弄します。祖母の家で友達になった猫のレディ・エメラルドやネズミのねずざえもんとともに、子犬の命を守ろうとします。
さて、子犬の命は守れるのか、どんべらべっこの正体はなんなのか、不思議な冒険の始まりです。

この映画をぜひ皆さんにご紹介したいと思ったのは、冒頭でも書きましたが、命の大切さを強く訴えている映画だからです。
子犬の命が消えかけていることをちえりにチェリーが説明しているシーンで、チェリーは、ちえりに「誰もがみんな、それぞれ、いのちの火を持っている」「普段は見えないだけで誰でも見ようと思えば見ることが出来る」「心を鏡のように磨くんだ」「心のなかに鏡がある。その鏡を磨くんだ。星の光が映るように」と語りかけます。本当に必要なものは何か、いのちの火を守るにはどうしたらいいのか、この映画は示唆しています。

そして、想像力豊かなちえりが真の勇気を持って歩み始めるとき、すてきな結末が待っています。アニメーションは、子どもの映画と思われることが多いのですが、その物語の中に多くの示唆が含まれています。
ぜひ、劇場へ足を運んで観てください。想像力を持つことのすばらしさと、命の大切さを教えてくれるはずです。

なお、併映としてロシアで最も愛されている国民的キャラクター「チェブラーシカ」を描いた短編パペットアニメーション『チェブラーシカ 動物園に行く』も上映されます。この短編映画では、思いやりとはなんなのか、真の友情とは何かを描いています。

(中村恵里香、ライター)

2月15日より全国のイオンシネマにて2週間限定上映

スタッフ
原作・監督:中村誠/脚本:島田満、中村誠/キャラクターデザイン:レオニード・シュワルツマン、伊部由起子/音楽:大谷幸
主題歌:Salyu 「青空」(作詞&作曲 桜井和寿、編曲 小林武史)(Courtesy of OORONG-SHA MUSIC PUBLISHER)
キャスト(声の出演):
高森奈津美、星野源、尾野真千子、栗田貫一、田中敦子、伊達みきお(サンドウィッチマン)、富澤たけし(サンドウィッチマン)、和希沙也、北川里奈、佐武宇綺(9nine)、谷育子、花村さやか ほか
製作:株式会社フロンティアワークス、「ちえりとチェリー」製作委員会
上映時間:約54分
公式ホームページ:http://www.chieriandcherry.com/#


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