『愛の詩人ゲーテ ヨーロッパ的知性の再発見』
小塩節著 NHK人間大学 日本放送出版協会 1999年 126ページ 534円+税
ドイツの偉大なる詩人・ゲーテが亡くなったのは、1832年3月22日、82歳7か月だった。(まあ詩人とばかりは言えない活動をされた人だけれども)
いま『愛の詩人ゲーテ ヨーロッパ的知性の再発見』(小塩節著)を再読している。
※
死の間際に「もっと光を!」という言葉を残したと言われるが、これはブラインドを開けてくれということだったらしい。それよりも、虚空に指で「W.」
を書いたのは、自分の名前とモーツアルトの名前が同じことを刻み込みたかったのだという。ベートーベンではなくてモーツアルトなのが面白い。
を書いたのは、自分の名前とモーツアルトの名前が同じことを刻み込みたかったのだという。ベートーベンではなくてモーツアルトなのが面白い。ゲーテの生きた時代は、ドイツの都市市民階級が興隆していった時代であった。七年戦争、フランス革命、そして戦乱が続き、ナポレオンの登場となる。ゲーテの育った環境が、君侯のいない自由都市フランクフルトであり、ゲーテが生涯にわたって「自由」を求めたということは、近代ヨーロッパの市民文化が追求したことをゲーテが実現した価値観だったという。
ゲーテは82歳で『詩と真実』第四部完成、『ファウスト』第二部完成をさせている。
ゲーテは文字を書くという行動に生命を賭けた。詩人ゲーテの生き甲斐は一行でいいから自分自身のことばを書くことだった。それも真に自分自身の孤独の中から出てきたものとして。
そのゲーテを敬愛し、ゲーテについて多くの批評を残しているトーマス・マンもまた自由都市リューベックの市民の子だった。
ぼくはさらにこうした作家たちの偉作を読んでいきたいと思う。
2026年の現在点において、「ヨーロッパの知性が問われている」のではないだろうか、と思うからだ。
鵜飼清(評論家)

