映画で見る戦争と平和 アメリカ統治時代の沖縄編


中村恵里香(ライター)

1945年6月23日に沖縄の過酷な戦闘が終結したとされ、その後の沖縄は、アメリカ軍による統治が行われ、沖縄に平和が訪れたという人がいますが、本当にそうでしょうか。戦後沖縄の現状を描いた映画は、13本あります。その作品の内容と共に皆さんと紐解いていきたいと思います。

一覧表はこちら(クリックでPDFが開きます)

 

八月十五夜の茶屋(英題:The Teahouse of the August Moon)

まず最初に1956年にアメリカで製作された『八月十五夜の茶屋』をご紹介します。

1951年に刊行された沖縄を舞台とするヴァーン・J・スナイダー(Vern J. Sneider)の小説を映画化したものです。アメリカ合衆国による沖縄統治アメリカ軍政下の沖縄を舞台に、民主主義の定着と村の復興のために派遣された軍人とその通訳、そして村人達の交流を描く喜劇です。

 

日本列島

吉原公一郎の『小説日本列島』を熊井啓が監督した社会派サスペンス映画です。

1959年。埼玉県にあるキャンプ・スコットの陸軍憲兵司令部(CID)で通訳主任として勤務する秋山は、ポラック中尉から前年に発生したリミット曹長変死事件の再調査を命じられます。CIDは在日米軍の兵士や軍属による犯罪調査を担う私服刑事部です。東京湾に浮かんだ曹長の死体は日本側による反対にもかかわらず、解剖を待たずに米軍側に引き渡されたうえ、本国に送られてしまいました。

秋山は新聞記者2人とともに事件の全貌をさぐるため、沖縄に向かいます。日本とアメリカの関係を如実に表し、ハラハラどきどきする展開の待っているドキュメンタリータッチの作品です。

 

オキナワの少年

沖縄から集団就職で上京した主人公のアメリカ占領下の沖縄における少年時代と上京した青年時代を交錯させながら、夢と死や自殺に直面する現実を対比させ、復帰前の沖縄人の葛藤を描いています。

https://youtu.be/K9dxx-5xZFY?si=ioCGncBNuGuI1pAH

 

パラダイスビュー

『パラダイスビュー』は、高嶺剛監督による、復帰前の沖縄を舞台としたファンタジー映画です。

30歳のレイシューは失業中で、毎日実家で怠惰な日々を過ごしていました。ある日、彼に思いを寄せる村の手伝い女チルーは、レイシューのマブイ(魂)が犬に食べられてしまう夢を見ます。

村には東京からイトーという植物学者が来ており、ナビーという娘との結婚話が進んでいました。ところがナビーはレイシューの子供を身篭っていることが判明します。村の人々は困惑するものの、毛遊びの場でのことであるので誰も彼を責めようとはしません。そんな矢先、レイシューの祖母が誤って米軍に射殺されてしまい、葬儀の席で故人を侮辱した弔問客を殴ったレイシューは警察に逮捕されてしまいます。しかし、護送車は独立派ゲリラに乗っ取られ、逃げ出したレイシューはそのまま行方をくらましてしまいます。

 

ウンタマギルー

沖縄県西原町に伝わる民話「運玉義留」をベースに、日本復帰直前の沖縄を描いたマジックリアリズム的なファンタジーです。

舞台は、アメリカ統治下の沖縄。製糖所で働く青年・島尻ギルーは、西原親方の元で暮らす不思議な女性マレーを毛遊びに誘い出し関係を持ちます。しかしマレーの正体は、親方がニライカナイの神から預かったゥワーマジムン(豚の化身)でした。

秘密を知ったギルーは親方に投げ槍で命を狙われ、製糖所放火の濡れ衣を着せられることとなり、サーダカ(霊感を持つ)で娼婦でもある妹チルーの助言で運玉森(ウンタマムイ)に身を隠します。以前子供のキージーが溺れているのを助けた恩返しに、森の精霊キジムナーから空を飛ぶなどの霊力を授かったギルーは義賊ウンタマギルーとなって、親方のもとで豚の種付をしていた油喰(アンダクェー)と共に貧しい村の人々や独立派ゲリラたちの英雄となります。その後、ウンタマギルーを題材とした芝居に本人役として出演したギルーは客席にいた西原親方に投げ槍で額を貫かれ、どこかへ歩いて行ってしまいます。

一方不義のマレーを高等弁務官に差し出した西原親方は、マレーとの情交を楽しみにはるばるニライカナイからやってきた神様の不興を買い、ヤンバルクイナにされてしまいます。場面は変わり、サンラーというギルーに似た男が製糖所で働いています。そこに製糖所を引き継いだ安里親方がやってきて、沖縄の日本復帰を告げ、何も知らない様子のマレーと自爆します。

 

Aサインデイズ

崔洋一監督による作品で、沖縄の女性ロックシンガー・喜屋武マリー(後のMarie)の半生を取り上げた利根川裕の著書『喜屋武マリーの青春』(1986年)を、原案としています。

本土復帰以前のベトナム戦争期であった1968年の沖縄のコザ市(現・沖縄市)で、米兵相手の飲食店で働いていた16歳の混血の少女エリは、地元のロックバンドのリーダーであるサチオと出会って恋に落ち、サチオたちとバンドを組んでロック音楽にものめり込んでゆきます。音楽に生きてゆくふたりは、本土復帰へと向かってゆく時代の変化の中で翻弄されてゆくのです。

 

ひまわり~沖縄は忘れない あの日の空を~

1959年6月、米軍機が沖縄県石川市(現・うるま市)に墜落し、宮森小学校の学童11人を含む17人が犠牲となった「宮森事件」を題材にした人間ドラマです。ある日、米軍ヘリが沖縄国際大学に墜落しました。52年前、宮森事件に遭遇し、友人の死を目の当たりにした過去を持つ良太は、再び米軍機墜落の現場を目撃したことで、胸中にかつての悲劇がよみがえります。一方、大学のゼミで宮森事件について調べはじめた良太の孫・琉一は、事件の傷跡がいまだに遺族の心を苦しめていることを知ります。

 

戦場ぬ止み(いくさばぬとぅどぅみ)

沖縄県・東村高江のヘリパッド建設に反対する住民たちの声をすくい上げた『標的の村』の三上智恵監督が、2015年、アメリカ軍新基地建設のため埋め立てが進む辺野古の海で起こっている衝突を記録したドキュメンタリー。2014年11月の沖縄県知事選で新基地建設反対の翁長雄志氏が勝利した後も、国策として海の埋め立てが続き、現場では住民による抗議活動とそれを排除しようとする警察や海上保安庁との衝突も起きています。そうした激しい対立の起こっている現実のほか、基地と折り合って生きる人々の思いや、苦難の歴史のなかで培われた沖縄の豊かな文化や暮らしも描き出している作品です。タイトルは、辺野古のゲート前のフェンスに掲げられていた琉歌の一節から取られたもの。

 

米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー

アメリカ合衆国による沖縄統治に抗い、活動した政治家の瀬長亀次郎を描いたドキュメンタリー映画です。2016年8月21日、TBSテレビで放送された『報道の魂』スペシャル「米軍が最も恐れた男~あなたはカメジローを知っていますか?~」がもとになっていて、追加取材・再編集を行い、未公開映像や関係者のインタビューも取り入れて映画化されました。

 

米軍(アメリカ)が最も恐れた男 カメジロー不屈の生涯

戦後、占領下の沖縄で米軍の圧政と戦った政治家・瀬長亀次郎の生き様を描いたドキュメンタリーの第2弾。那覇市長や衆議院議員を務め、不屈の精神で戦い続けた瀬長亀次郎の人生を追い、カメジローの生涯をさらに深く掘り下げると同時に、本土復帰へ向けた激動の沖縄を描き出しています。カメジローが残していた230冊を超える日記を丹念に読み解き、妻や娘らと過ごす家族の日常や、政治家・夫・父親などカメジローのさまざまな顔を浮かび上がらせていくほか、1971年12月4日の衆議院沖縄及び北方問題に関する特別委員会で時の首相・佐藤栄作と繰り広げた激論の記録映像が収められ、現代へと続く沖縄の解決されない問題や事象の原点を浮き彫りにしています。

 

サンマデモクラシー

沖縄テレビ放送が製作したドキュメンタリー映画の第2弾です(第1弾は『ちむぐりさ 菜の花の沖縄日記』)。歴史に埋もれていた「本土復帰を求める運動に火を付けたのは、肝っ玉おばあが起こしたサンマをめぐる裁判だった」という事実を軽妙に描いています。

日本は戦後、サンフランシスコ講和条約(1952年)によって主権を回復しましたが、沖縄では当時、アメリカ軍の琉球列島国民政府(USCAR)が事実上、統治していました。日本からの輸入品には関税がかけられていましたが、法律に書かれていないサンマにも、根拠のない20%の輸入関税がかかっていました。これにおかしいと気付いた魚屋の女将・玉城ウシは、琉球政府を相手に当時前代未聞だった裁判を起こします。“ラッパ”と呼ばれた政治家・下里恵良、米軍が最も恐れた男“カメジロー”こと瀬長亀次郎らがこの波に加わり、本当の主権回復を求める大きな渦を巻き起こしていきます。焦点を当てる玉城ウシに関する資料はほとんどなく、作品は埋もれた戦後史を掘り起こすことになったといいます。

 

太陽(ティダ)の運命

佐古忠彦監督が、それぞれ国と激しく対峙した2人の沖縄県知事の姿を通して、沖縄現代史に切り込んだドキュメンタリーです。

沖縄本土復帰後の第4代知事・大田昌秀(任期1990~98年)と第7代知事・翁長雄志(任期2014~18年)は、政治的立場は正反対でありながらも、ともに県民から幅広い支持を集め、保革にとらわれず県政を運営しました。大田は1995年に軍用地強制使用の代理署名拒否、翁長は2015年に辺野古埋め立て承認の取り消しを巡って国と法廷で争い、民主主義や地方自治のあり方、そして国の矛盾を浮き彫りにしました。

彼らの人生に関わった多くの人々の証言を交えながら、その人間的な魅力にも光を当て、それぞれの信念に生きた2人の不屈の闘いを描き出しています。タイトルの「ティダ」は沖縄の方言で太陽の意味で、古くは首長=リーダーを表した言葉。二人の沖縄県知事の姿勢から現代の沖縄問題を如実に表している作品です。

 

宝島

沖縄の戦後20年間を描いた直木賞受賞作『宝島』の映画化です。こちらは過去に「映画に発見!」のコーナーでご紹介していますので、詳細はこちらをご覧ください。

 

第二次世界大戦後、沖縄は本当に平和になっているのか、これらの作品を観ると疑問が多くわき出ます。私たち本土の人間にはわからない本当の苦しみがこれらの作品にはにじみ出ています。今回は、沖縄をメインに描いた作品を選びましたが、ほかにもたくさん沖縄の苦しみを描いた作品があります。本当の平和とは何か、戦後生まれの私たちが今きな臭い世界になっている現状をきちんと見極め、向かい合うことが必要なのではないかと感じる作品群です。

 


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