Doing Charity by Doing Business(32)


山田真人

前回は、「教育の村(Global Village)」という言葉を大事にしているGlobal Compact on Educationについてバチカンで行われた会議を紹介しました。今回は、その概念とも通じる教会のメッセージを実社会で応用するための教育について、学校経営をされている方の視点も含めて、さらに考えていきます。

カトリック教育や教会の活動には、「社会教説」や「建学の精神」といった大切な考え方があります。しかし、キリスト教にあまりなじみのない方、学校の生徒や保護者の方などにとっては、それらは少し難しく、抽象的に感じられることも少なくありません。特に、教皇やバチカンといった遠い存在から発せられるメッセージは、正しいと分かっていても、自分の日常生活や学校現場との繫がりは見えにくいという課題があります。

光塩女子学院中等科、高等科の親睦会にて、メルセス会のシスターと保護者に活動を説明する生徒の様子

筆者は今までカトリック校も含めて80校程度の学校にお話をさせて頂き、管理職の方とミーティングをしました。その中で、この「大切だが遠い」という構造は、カトリック学校の経営やその理念形成にも共通しているのではないかと思うようになりました。学校が大切にしている教育理念や建学の精神は、教職員、特に管理職の方、そして修道者を含めた理事にとっては日々の実践の軸ですが、生徒や保護者にとっては、毎日意識されるものではありません。特に保護者は、学校に毎日足を運ぶわけではなく、「理念そのもの」よりも、「子どもがどのように変わってきているか」を通して学校を理解しています。

NPO法人せいぼも、このような「遠さ」を引き受けながら活動している団体です。せいぼの活動の中心には、アフリカのマラウイで暮らす子どもたちがいます。彼らは、せいぼにとって最も大切な存在ですが、日本にいる私たちが日常的に会うことはできません。それでも、せいぼは、マラウイの子どもたちを中心に考え、寄付を集め、学校給食や教育支援を継続しています。言い換えれば、せいぼは「最も大切でありながら、最も遠い存在」を中心に経営しているNPOです。これは、私たちだけではなくNPO全体のミッションと繋がります。NPOは、なるべく多くのお金を、社会的ミッションのため、教会で言う社会教説の実践のために優先的に使用します。

NPO法人せいぼの特徴も、チャリティの理念から来る思いを軸に、数字や成果を非常に大切にしている点にあります。例えば、寄付金の総額、支援している学校の数、提供している給食の回数などを、できる限り分かりやすく伝えています。2024年には1,600万円をマラウイに送金し、日本のみから創出される純利益となりました。そのうち1028万円は、学校法人との提携による寄付やコーヒーの売り上げになります。このように伝えるのは、金額を強調したいからではありません。むしろ、理念が現実の中で本当に機能しているのかを、具体的な形で示すためです。数字は冷たいものではなく、支援が届いている証拠であり、支援者との信頼関係を支える大切な要素なのです。

こうしたNPOの実践に、生徒が関わることで、大きな教育的価値が生まれます。生徒は、貧困や社会問題を「知識として学ぶ」だけでなく、それが実際の人の生活とどのように繋がっているのかを体験的に理解するようになります。「かわいそうだから助ける」という気持ちから、「自分はこの人たちとどう関わるのか」「自分に何ができるのか」という問いへと、生徒の意識が変化していきます。生徒が貴重な体験をすることで、質の高い時間を学校で得ていることが保護者の方に伝わり、例えば彼らがデザインした商品を買って下さる保護者が増えるなど、具体的な数値でその評価が表されます。

サレジオ学院、静岡サレジオでの探究学習後、団体の活動に関わってくれている大学生二名による、初のマラウイ滞在

以上のように、NPOが間に入り、ある程度理論的に指標化できる成果を出しつつ、社会的ミッションに還元する作業をはさむことで、教会から発信されるメッセージを学校として体現することに繋がります。

カトリック教育の経営とは、理念を掲げることだけではなく、その理念が生徒の生き方や社会との関わり方として表れているかを、丁寧に見つめ続ける営みだと言えます。NPO法人せいぼは、その過程を社会の中で実践し続ける存在として、教会や学校とミッションを共有しながら歩んでいます。その歩みこそが、カトリック教育と社会を繋ぐ、大切な架け橋になっていくことを目指しています。

 

山田 真人(やまだ・まこと)
NPO法人せいぼ理事長。
英国企業Mobell Communications Limited所属。
2018年から寄付型コーヒーサイトWarm Hearts Coffee Clubを開始し、2020年より運営パートナーとしてカトリック学校との提携を実施。
2020年からは教皇庁いのち・信徒・家庭省のInternational Youth Advisary Bodyの一員として活動。

 


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