はだしのゲンは怒っている


『はだしのゲン』という漫画をご存じでしょうか。私がこの漫画の存在を知ったのは、単行本化された高校生の頃だと思います。衝撃的な作品でした。その『はだしのゲン』が怒っているというドキュメンタリーが公開されます。『はだしのゲン』が怒っているとは、どういうことなのか興味を持って観に行きました。

著者である中沢啓さんは、自らの経験を漫画にしていった経緯についてさまざまな形で言葉を残しています。私たちに語りかけているのです。それをどのように受け取るかはそれぞれの人たちに託されていると思っていました。

さて、映画の内容に関しての話に移りたいと思います。

広島では平和教育の教材として『はだしのゲン』が長く使われていましたが、表現が主劇的すぎるとか、歴史認識に誤認があるとのことで2023年教材からはずされました。

そのなかで、生前の中沢さんから生々しい体験を機器、衝撃を受けたことで中沢さんの見た8月6日を案内する渡部久仁子さんや40年近くゲンの物語を講談を通して伝える神田香織さん、ボランティアグループ「プロジェクト・ゲン」を立ち上げ、漫画「はだしのゲン」の英語翻訳版を企画し、2年がかりで外国語版第一号を完成させた大嶋賢洋さん、その大嶋さんから声をかけられ、英語版の翻訳に携わったアラン・グリースンさんなど、戦後『はだしのゲン』によって原爆の悲劇を知り、伝えようとした人々のほか、被爆経験者の江種祐司さんや、阿部静子さん、元広島市長の平岡敬さんや中沢計算の妻/中沢ミサヨさんなど『はだしのゲン』を肯定する人々のほかに漫画「はだしのゲン」は「手品のような作品」「歴史的事実の描写が間違っている」と自論を展開する一方で、漫画としては、自身の歴史解釈と異なる部分を除けば面白くていい図書だと語る後藤寿一さんなどの批判的な意見をも加え、多角的に『はだしのゲン』を現在の状況を切り取っています。

ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエルによるパレスチナ侵攻など、さまざまな形で戦闘が繰り広げられている現状をゲンが訴えている原点に立ち返るべきだと語りかけてくれる作品です。ぜひ、映画館に足を運びご覧ください。

中村恵里香(ライター)

11/14()より[広島]サロンシネマ

11/15()より[東京]ポレポレ東中野ほか全国順次公開

公式ホームページ:https://gen-angry.jp/

スタッフ

企画・監督・編集:込山正徳/プロデューサー:高橋良美、木村利香/共同プロデューサー:大島新、前田亜紀/音楽:茂野雅道/制作:東京サウンド・プロダクション/制作協力:ネツゲン/宣伝協力:リガード/配給:アギィ/製作:BS12 トゥエルビ/2025 年/日本/90 分/© BS12 トゥエルビ


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です