ミャンマー・ダイアリーズ


世界のあちらこちらで内紛が起こっています。そのさきがけが2021年2月1日に起こったミャンマーの軍部による氾濫だったような気がします。アウンサンスーチー氏による民主化の動きが起こって10年、民主化の道を進むと思っていた国がある日突然軍部による氾濫で世界が一変したのですが、ロシアによるウクライナ侵攻などがあり、ミャンマーのその後の情勢は、日本にいる私たちにはほとんど入ってきていません。なんとなく気になり、どうなっているのだろうと思っていたところに、「ミャンマー・ダイアリーズ」というドキュメンタリー映画が公開されています。

© The Myanmar Film Collective

この作品は、ミャンマーの若手映像作家たちが匿名性を維持しながら「ミャンマー・フィルム・コレクティブ」を結成し、メンバー10名による短編作品とSNSに投稿された一般市民による記録映像をつないでつくられた作品です。作品ができるまでの経緯を製作者の人マイケル(仮名)さんが

「ひとりひとりの名前は明かせませんが、その多くがもともと知り合いだった10人のミャンマー人映画作家が集まったグループです。クーデターが起きて約1週間後に自然と話し合いの場を持つことになって、『何かやるべきだよね』と意気投合した仲間たちの総称です。メンバーの年齢は20代から30代半ば。公的な機関でもないし、代表者がいるわけではありません。こういうインタビューの機会があれば、誰か空いている人が出て答えるようにしています。

とはいえ、私たち作家の周りには、編集や撮影を手伝ってくれたり、生活をしていく現場に携わってくれる人たちもいるので、実際はもっと多くの人たちがこの映画に携わってくれています。厳密なメンバーのリストがあるわけではないけれど、『助けてくれるからあなたもコレクティブだね』というほどくだけた集まりでもなく、『私はあなたのことを知っているよ』以上の『あなたのことを信頼しているよ』というところまでいった仲間たちの集まりです。

それぞれの作家が『僕は君の映画ではカメラをやる』『君の映画には出演するよ』とか助け合いをしながら、できた映画なんです。とはいえ、その計画を大っぴらにはできませんから、SNSのグループチャットを使って飲み会とか食事会の名前をつけて、食事とか料理とかのことを隠語にして『ちょっと皿洗いを手伝ってよ!』みたいなコミュニケーションの中で協力者を募ったりして、映画づくりを進めて行きました。」と語っています。

その映像は、驚くべきものがあります。電子ピアノを弾き、町になりたいといっていた女性がデモに参加する姿、息子とほぼ同じ年頃の兵隊たちに抗議を続ける女性、血に染まったTシャツとヘルメットを前に女性の罪を神に祈る男性、そして軍隊による制圧の姿など、日本にいる私たちには届かない姿等々です。

そして最後に若者たちが森の中に入り、軍事訓練をする姿があり、そこに「私たちの声を聞いてください」と訴えかけます。その声に私たちは何が

© The Myanmar Film Collective

できるのだろうかと深く考えさせられました。上映後、監督の1人から「興行収入より映画館への配分と配給・宣伝経費を差し引いた配給収益の全額を支援金とし、ミャンマー避難民の生活支援活動を行う団体・施設に寄付します」とのメッセージがありました。1人でも多くの人にこの作品を観ていただくことが民主化へ命をかけて闘う人々の支援になります。ぜひ、映画館に足を運んで観てください。

中村恵里香(ライター)

8月5日(土)〜ポレポレ東中野ほか全国順次公開

公式ホームページ:https://www.myanmar-diaries.com/#

A film by Myanmar Film Collective
匿名のミャンマー人監督たちによる制作
2022
年/オランダ・ミャンマー・ノルウェー/70分 /ミャンマー語
配給:株式会社E.x.N
© The Myanmar Film Collective


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