映画で観る平和


中村恵里香(ライター)

本日、私がこのような場をいただけましたのは、ドン・ボスコ社から刊行していました『カトリック生活』に10年以上映画紹介の記事を書かせていただいていたからと思います。残念ながら『カトリック生活』は、今年の3月号をもって休刊となってしまいましたが、今はWEBマガジンAMORで月に2~3作の映画を紹介させていただいています。その中で、私が特にこだわって観ている作品は、やはり戦争に関するものです。

なぜ戦争にこだわるのか、それは、私の生い立ちに関係あると思っていますので、ここで少々ご紹介させていただきます。私の両親は広島で被爆しています。父は中学2年生、母は小学校6年生のことだったそうです。最初の子どもである私を身ごもったことで、被曝の影響がないのかすごく心配したといいます。生まれて1か月も経たないうちに高熱を出した私は、3歳まで生きられるのは難しいだろうといわれていました。それを聞いた両親は、私を大切に育ててくれました。また、長期休みになると広島にいる祖父母に預け、東京の光化学スモッグの影響で具合が悪くならないようにと配慮するほどでした。

ですから私は、夏休みや春休みは広島で過ごし、被爆者と共に生きてきました。小学生の頃、なぜアメリカは日本に原爆を落とさなければならなかったのか、そして祖父母はそれに対してどう思っているのか聞いたことがあります。その疑問に対して仏教徒である祖母は、「偉い人のことはわからないけれども、人を恨んだり、憎んだりしてもなにもいいことはない。それよりも人を赦すこと、そしてお互いに話し合い、分かち合うことが大切だ」と教えてくれました。

第二次世界大戦では、日本は被害者であると同時に加害者でもあります。大東亜共栄圏という壮大な野望を胸に戦争を起こしていると考えるからです。アジアの方々に大変な苦難と悲劇を与えたことは、私たち日本人は大いに反省しなければならないことだと思いますが、その反面、各都市に落とされた大空襲や沖縄戦、そして原爆投下などによって、多くの非戦闘員が死を迎えねばならなかったことを日本人として忘れてはならないと思っています。

日本映画の中で、原爆投下に関する映画はたくさんつくられていますが、その中で、ぜひ観ていただきたい映画を表にまとめました。すべてを紹介することはできないので、ここではいくつかをピックアップしてご紹介したいと思います。

広島原爆作品(クリックでPDFが開きます)

まず、日本語字幕付きですが、英語で鑑賞できるものをご紹介します。日本でつくられたものではありませんが、原爆の実相を知ることのできる作品『8時15分 ヒロシマ 父から娘へ』です。

 

では、日本以外に被爆者はいないのかというと、そうではありません。アメリカで原爆実験をしたことにより、被爆者が出ていると訴える映画はドキュメンタリー映画としてさまざまつくられています。その一つが『サイレントフォールアウト』という作品です。

 

なぜ人間は、原爆という恐ろしい兵器を作り出したのでしょうか。そして、ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエルによるパレスチナ攻撃など、今もやまない戦争が続くのでしょうか。

その答えを私は得ることができないまま、その理不尽さに憤りを感じています。

では私たちになにができるのか。そして平和へと導くことはできないのかと考えると、これも答えを得ることはできません。

映画を観ていると、その理不尽さが胸に堪えますが、でも私たちは信仰を持った者として訴えることはできのではないかと考え始めました。イエス様は『右のほほを打たれたら、左のほほを出せ』とおっしゃっています。そしてその言葉とともに祖母の言葉が私の胸に訴えてきます。恨むのでもなく、憎むのでもなく、まずは相手を知り、相手とともによく語り合い、そして手を結ぶこと、これが信仰を持つ者として世界に訴えかけることのできる唯一の手段ではないかと思っています。

すべての人が戦火によって傷つくことのない世界が生まれることを願ってやみません。

 


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です