宝島


終戦後80年を迎えた今年は、戦争をテーマにした映画が多く、今年ならではではないかと思うのですが、その中でも沖縄を舞台にした作品が多いのも目立ちます。その沖縄を舞台にした映画の紹介についてはまたの機会に譲るとして、今回ご紹介したい作品は沖縄の戦後20年間を描いた直木賞受賞作『宝島』の映画化です。
1952年、アメリカ軍統治下の沖縄で、アメリカ軍基地を襲撃し、奪った物資を住民らに分け与える“戦果アギヤー”と呼ばれる若者たちがいました。いつか

©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会

「でっかい戦果」を上げることを夢見る幼馴染のグスク(妻夫木聡)、ヤマコ(広瀬すず)、レイ(窪田正孝)の3人に、彼らの英雄的存在で、リーダーとしてみんなを引っ張っていたのが、一番年上のオン(永山瑛太)でした。すべてをかけて臨んだある襲撃の夜、オンは“突然消息を絶ちます。
6年後、グスクはオンを探す手がかりになればと刑事になります。ヤマコはアメリカ兵相手のAバーを切り盛りするチバナ(瀧内公美)の元で働きながら勉強し、オンと約束した教師に。そしてレイは刑務所に入り、オンに関する情報を収集し、出所後、やくざとなります。
刑事になったグスクは、アメリカ統治下の沖縄でアメリカ兵が犯人とわかっていてもなにもできない現実に腹を立てながらなにもでき奈一現実にぶつかっていきます。
そんな中、アメリカ軍の高官アーヴィン・マーシャル(デリック・ドーバー)と通訳の小松(中村蒼)が現れ、アメリカ軍の“トモダチ=スパイ”になれと持ちかけられます。オンの消息を知りたいグスクは承知し、基地内部とも繋がりを持ちます。わずかな手がかりを頼りにオンが消えた日に共に侵入した謝花ジョー(奥野瑛太)から「あの世、オンは予定に内戦下を手に入れた」と知らされます。
一方、覆面をかぶった謎の男たちにアメリカ兵が襲撃される“アメリカ狩り”が横行し始めると、アメリカ軍は背後にオンの存在があるのではないかと疑い始めます。その頃からレイの消息がわからなくなります。

©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会

ヤマコが教師として勤める宮浦小学校にアメリカ軍の戦闘機が煙を上げながら校庭に落ち、爆発します。校舎は破壊され、多くの子どもたちが犠牲になります。パイロットは脱出し、無事であり、「エンジン故障による不可抗力の事故」と発表されます。悲嘆に暮れるヤマコのもとに花売りの孤児ウタ(光路)が元気づけようとします。
住民の間で基地反対運動の熱が高まる中、本土復帰が発表されますが、基地はそのままという情報にヤマコはデモ活動に邁進していきます。
アメリカ兵によるさまざまな事件により沖縄の人々の怒りは高まっていきますが、コザで起こった交通事故で、事故を起こしたアメリカ兵を基地に帰すまいとする住民たちにより大きな事件へと発展していきます、これはずっと抑圧されてきた沖縄の人々によるアメリカと本土に向けた怒りの爆発でした。
物語は大きく動いていきます。行方不明になったレイはどこにいるのか、青年になったウタ(栄莉弥)の存在とは何か、そしてオンはどこにいるのか、オンが基地から持ち出した“予定外の戦果”は皆さん観てのお楽しみです。
アメリカ統治下の20年の歳月をていねいに描いているこの作品は3時間超という長い作品ですが、決して長く感じられない魅力に満ちた作品です。今も続

©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会

くアメリカ軍の駐留に対する沖縄の怒りがどこにあるのか、そして平和とは、幸せとは何か、深くさまざまなことが語りかけられています。監督の大友啓史氏は「いつか本土復帰前の沖縄を描きたいと思っていた」といっています。企画から公開まで6年の歳月をかけたというだけのある圧巻な作品です。私たち本土の人間には沖縄の心はわからないこともありますが、沖縄に寄り添うことはできるのではないか、そしてなにができるのか問いかけられているように感じました。ぜひ映画館に足を運んで観てください。

中村恵里香(ライター)

2025年9月19日(金)全国公開
公式ホームページ:https://www.takarajima-movie.jp/

スタッフ
監督:大友啓史/原作:真藤順丈『宝島』(講談社文庫)/脚本:高田亮、大友啓史、大浦光太/製作:中村光孝、角田真敏、門屋大輔、吉村文雄、森正文、ルーシー・Y・キム、植田泰生、藤原寛、出來由紀子、津田真希子、上原直樹、中村一彦、武富和彦、野島正也、久保浩章、長濱弘真、永堀真/企画・プロデュース:五十嵐真志/エグゼクティブプロデューサー:石黒研三、佐倉寛二郎、ルーシー・Y・キム/プロデューサー:野村敏哉、角田朝雄、福島聡司/ラインプロデューサー:村松大輔/撮影:相馬大輔/照明:永田ひでのり/録音:湯脇房雄/美術:花谷秀文/装飾:渡辺大智、島村篤史/衣装デザイン:宮本まさ江/ヘアメイクディレクター:酒井啓介/編集:早野亮/音楽:佐藤直紀/VFXスーパーバイザー:小坂一順/音楽プロデューサー:津島玄一/スーパーバイジングサウンドエディター:勝俣まさとし/ミュージックエディター:石井和之/監督補:田中諭

キャス:妻夫木聡、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太、塚本晋也、中村蒼、瀧内公美、栄莉弥、尚玄、ピエール瀧、岸木幡竜、奥野瑛太、村田秀亮、デリック・ドーバー
2025年製作/191分/日本/配給:東映、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント/©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会


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