ゲッベルス ヒトラーをプロデュースした男


人は歴史に学べとよく言われます。今世の中のきな臭さを見ていると本当に学んでいるの? と思わざるを得ないように感じるのは、私だけでしょうか。太平洋戦争終結から80年を迎える今年、戦争について考える映画が次々と公開されるようです。その中のひとつと言える映画作品がまもなく公開されます。今日ご紹介しようとおもう映画は「ゲッベルス ヒトラーをプロデュースした男」、ヒットラーをプロデュースしたといわれる人の半生を描いた作品です。

1933年のヒトラー首相(フリッツ・カール)就任から1945年にヒトラーが亡くなるまでの間、プロパガンダを主導する宣伝大臣として、国民を扇動してきた

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ヨーゼフ・ゲッベルス(ロベルト・シュタットローバー)は、当初平和を強調していました。ユダヤ人の一掃と侵略戦争へと突き進もうとするヒトラーから激しく批判され、ゲッベルスは信頼を失っていきます。愛人との関係も断ち切られ、自身の地位を回復させるため、ヒトラーが望む反ユダヤ映画の製作、大衆を扇動する演説、綿密に計画された戦勝パレードを次々と企画し、国民の熱狂とヒトラーからの信頼を再び勝ち取っていきます。独ソ戦でヒトラーの戦争は本格化し、ユダヤ人大量虐殺はピークに達していきます。スターリングラード敗戦後、ゲッベルスは国民の戦争参加をあおる総力戦演説を行います。しかし、状況がますます絶望的になっていく中、ゲッベルスはヒトラーとともに第三帝国のイメージを後世に残す最も過激なプロパガンダを仕掛けていきます。

ヒトラーの腹心として、プロパガンダ政策を担ったゲッベルスは、演説、ラジオ、映画などメディアを通して国民感情を煽り、操り、ヒトラー政権を拡大させていきます。

この作品は、実際にゲッベルスが撮ったであろうドキュメンタリーや映画作品を随所に挟み、ゲッベルスの驚きの発言や行動、ヒトラーやナチ幹部たちの恐

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るべき会話など、ナチスドイツの裏側の実態を描き出しているところです。

今、ウクライナやガザにおける戦争、ポピュリズムや極右台頭の背後で喧伝される言葉や映像、量産されるフェイクニュース、インターネット全盛の現代社会で私たちがどのようにウソを見抜き、真実を見極めることができるのでしょうか。今の現状がナチスドイツの時代へと向かっているように見えるのは私だけなのか、そして、歴史に学ぶことはできるのか、私たちに語りかけているように思える作品でした。

そして作品の最後にホロコーストの生存者マルゴット・フリードレンダー(女性)氏のインタビュー「なぜあれほど多くの人々が他人を殺すことに手を貸したのか、私には理解できない。我々はみな平等な人間として生れてきた。他の人を尊敬すること、人間であることが最も重要だ」という言葉が流れます。私たちに語りかける言葉の重みにすごく考えさせられる映画です。ぜひ映画館に足を運んで観てください。

中村恵里香(ライター)

411日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町・新宿武蔵野館 ほか全国順次公開

公式ホームページ:https://www.goebbelsmovie.com/

スタッフ

監督・脚本:ヨアヒム・A・ラング/製作:ティル・デレンバッハ、ミヒャエル・ソーヴィグナー/撮影:クラウス・フォックスイェーガー/編集:ライナー・ニグレリ/音楽:ミヒャエル・クラウキン/音響:ブラジャイ・ヴィドリチカ/美術:ピエール・プフント/衣装:カタリーナ・シュトルボヴァ・ビエリコヴァ/キャスティング:マーク・ショッテルドライアー

CAST

ロベルト・シュタットローバー、フリッツ・カール、フランツィスカ・ワイズ

2024年/ドイツ・スロバキア/ドイツ語/128分/原題:Führer und Verführer(英題:Fuhrer and Seducer)/配給:アット エンタテインメント、Subsidized by German Films© 2023 Zeitsprung Pictures GmbH


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