Doing Charity by Doing Business(18)


山田真人

前回の記事では、学生がボランティア体験を通して自分のタレント(才能)に気づき、それを時間を相手のために使う、つまり時間の贈与体験を通して自らの生きている意味に気づいていくことができるプロセスに繋がることをお話しました。このような点をボランティアに見出すことができるのが、ミッションスクールの召命教育だと考えています。今回は、その具体例としてThe Catholic University of Americaで推進されているCEDE-Catholic Entrepreneurship for Teensの内容に触れつつ、NPO法人せいぼで実施している召命教育と繋げます。

NPO法人せいぼが給食支援をするマラウイでは、朝食がその後の教育の質、子どもたちの未来の可能性を支えています

CEDEは、 “the Catholic Entrepreneurship and Design Experience”の略で、特に10代の学生に夢を持つ勇気を与え、具体的な体験をもとに生き方を変えていけると教えることを目的としたものです。そのカリキュラムは、まず自分の人生を考えるところから始まり、具体的なライフプランとカトリックのカテキズムで重視されている倫理観、そして実際にそれを生きている人の事例をもとに、具体的な行動変容を促すといった内容があります。こうしたアメリカのカリキュラムは、とても事例が充実しており、正面からキリスト教の持つ社会正義が紹介され、その上で自分のアイデンティティを考えるプロセスに導かれます。

一方で、日本においてこうした自己の生き方と正面から向き合うという教育は、すぐに応用することは難しいように感じます。なかなか独自に家と学校以外のコミュニティを作ったり、飛び込んで行ったりするケースは比較的少ないからです。また、日本ではNPO法の派生は1998年であり、その後に発生した東日本大震災などの影響で現場の声から法改正が行われることもありましたが、なかなかNPOの活動について他の営利活動と同じような信頼を得られることが少なく、自分が社会にできることとは何かという問いを考える機会が、法的にも文化的にも少ないのかもしれません。

そんな中で、NPO法人せいぼは2つの方法で、このCEDEの導入としての活動を試みています。一つは、NPO、一般社団法人聖母への学生の参画の促しと実際の活動の体験、もう一つがそれに取り組む人のキャリアの姿の紹介です。現在NPO法人せいぼは、運営の最適化をするために、収益事業を一般社団法人せいぼで実施し、そこで出た金額をNPO法人せいぼに寄付するという形を取っていく形を整えています。それによって、収益事業の拡大を促進でき、NPOは変わらず基本的に寄付額のみに頼ることができるという形で運営ができます。また、収益事業、いわゆるビジネスをする上で支援企業が必要になった際も、その提携が取りやすい状態になり、一方のNPOは政府や企業からの助成金が受けやすい体制を保つことができます。

こうした非営利活動の仕組みを理解し具体的な活動を知れる機会は、株式会社などを前提とした政治経済の授業などでは少なく、学生にとってはとても貴重な機会になります。こうした経済の流れも知ることで、自分が大人になった際に社会に役に立てるとしたら、どんなことができるか、つまり自分のタレントに気づくきっかけにもなることがあります。こちらから是非、具体的な学生との活動、支援先のアフリカのマラウイの様子をご覧ください。

光塩女子学院中等科、高等科の生徒様による高円寺教会でのマラウイ支援の活動

例えば、支援企業のアタカ通商株式会社や英国通信事業者のMobellの姿、そしてそこで働く人々のやりがいを聞くことで、利益の配分や創出だけを目的とした事業の姿以外に、社会性や環境への還元を意識した経済活動のメリット、必要性を知ることができます。

上記のような活動を通して、徐々にNPOなどの非営利活動が、単なるボランティアではなく、利益を配分せず団体の掲げる社会的ミッションのために優先して利益を使っていく団体であることが分かってもらえるようになります。こう考えていくと、従来の金銭をしっかり稼ぐことができる良い仕事につくための日々の自分の勉強や学校での生活という次元ではなく、社会の中での自分のアイデンティティを考えた上での活動を意識してくれるようになります。

私たちは、CEDEのようなキリスト教の召命教育に賛同し、現在このカリキュラムとともに教育事業を展開できないか模索しています。一方で日本には独自の応用方法があるとも考えています。その中で必要なのは、従来のボランティア体験をさらにアップデートしていき、それをキリスト教の召命教育の導入にしていくことかもしれないと考えています。

 

山田 真人(やまだ・まこと)
NPO法人せいぼ理事長。
英国企業Mobell Communications Limited所属。
2018年から寄付型コーヒーサイトWarm Hearts Coffee Clubを開始し、2020年より運営パートナーとしてカトリック学校との提携を実施。
2020年からは教皇庁いのち・信徒・家庭省のInternational Youth Advisary Bodyの一員として活動。

 


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