『あなたは あなたのままでいい とっておきの聖書のことば23』


片柳 弘史:著『あなたは あなたのままでいい とっておきの聖書のことば 23』、RIE:絵、
PHP研究所、2023年、96ページ

K.S.

イエズス会司祭の片柳弘史神父、画家のRIEさんによる『あなたは あなたのままでいい とっておきの聖書のことば23』は、聖書から厳選された23の言葉にメッセージと解説がつけられ、また色鮮やかな絵がメッセージをより一層印象づけています。

タイトル「あなたは あなたのままでいい」は、聖書全体を貫く大切なメッセージです。また、RIEさんの描く活力のあるイラストは、単なる挿絵ということにとどまりません。特筆すべきなのは、イラストそれ自体もメッセージを発し、一つの作品として成り立っており、片柳神父の言葉と相互に引き立て合っているということです。

 

ありのままに生きること

今回選ばれた聖書の箇所と解説を一つ一つ追っていくと、著者のやさしい語り口が、神が私たちにありのままに生きることを望んでいることに気付かせてくれます。「ありのままに生きること」とは、一体どういうことなのでしょう。私欲のままに何でも思い通りに生きることとは、ちょっと違うような気がします。それよりも、自分を自然な状態で生かしていくという意味での「ありのまま」ではないでしょうか。それは、幼少期の自分とも重なって見えてきます――。

私たちは大人になるにつれ、社会の現実に直面します。そして、難しいことや面倒くさいと感じられることと向き合わなくてはなりません。自分を取り繕ったり、煩わしさを感じたりするうちに、「子どものころに戻りたい」と感じることがあります。幼少期に遊んだ川原や公園などを通りかかる時の、胸が熱くなってどきどきする感覚—―。人間は、本性的にありのままに生きることを願っているのだと感じさせられます。

 

手放していく生き方への招き

また本書を通して、ありのままに生きることは、「ゆるし」と密接なかかわりを持っていることに気付かされます。ここでいう「ゆるし」とは、他者をゆるすこと以上に、自分自身をゆるすことが大きいのではないでしょうか。もっとも、他者をゆるせないというのも、自分自身をゆるせなくて起きている心の反応—―他者の行動に自分自身が抱えるトラウマが引き起こされる――なのだと思います。なかなか思い通りにいかない、頑張ることのできない自分をゆるし、受け入れていく。ありのままに生きるということは、かたくなになってしまう自分との和解でもあります。

それは、「手放していく」という生き方とも重なり合って響いてきます。神は天地創造の初めから、この世界のすべてのものを極めて良いものとして見ていました。私たちが何の知識も持たず、力も持たない時から、良いものとして見ていてくださったのです。ここに、神の無償の愛があります。にもかかわらず、私たちは「ああでもない、こうでもない」と、いつしか重い鎧を身につけるようになってしまうのかもしれません。そのうちにだんだんと疲れてきて、ちょっとしたことで怒りっぽくなったり、好きだったものなのに面倒くさくなってしまったりするのでしょう。聖書の一つ一つのメッセージに立ち返ることによって、こうした私たちの凝り固まった考えが少しずつ解かれていくのを感じます。

 

日常の只中において神と出会う

本書を通して呼びかけられているこのような生き方は、著者の試みにも反映されているように思います。著者の片柳神父は、日ごろからX(旧Twitter)での発信活動に精力的に取り組まれています。季節の美しい花々を中心に、鮮やかな自然の景色の写真はほぼ毎日投稿され、フォロワーは20246月現在、13万人を超えています。片柳神父が以前こんなことをおっしゃっていたことを思い出します。「Twitterに写真を頻繁にアップロードするのは、美しい自然と出会うたびにいつも感動しているから。そこに神様の恵みがいっぱいだと発見し、心動かされる。フォロワーには信者ではない人も大勢いるが、一番わかりやすい形で、神様からいただいている喜びを共有することができると思っている――。」ニュアンスになってしまいますが、以上のような感じのことです。

あらゆる情報が錯綜する現代社会において、真理を見つけ出すことは、大変困難な作業のように思えます。しかし、著者のように、日常の一コマの中で神からいただいているものと出会い、素直に感動する心を持つができたら――。忙しない毎日の中でも、ふとした瞬間立ち止まって、道端に咲く花に意識を向けてみると、私たちの心の奥にある何かが反応を示すかもしれません。電車の中でも、スマートフォンからふと顔を上げて窓の景色を観察してみると、また違った感想を持つのかもしれません。心の動きに敏感になって、一つ一つのことに丁寧に向き合ってゆくことを実践してみたいと思っています。

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