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戦後生まれの私たちには、戦争の記憶がありません。そんな中で、子どもの頃、渋谷に出かけると、白い着物を着て、アコーデオンを弾いている傷痍軍人が、街に立っている姿が目につきました。幼い私は、それがどういう人なのかもよくわからずにいました。そんな姿を思い出す映画が今、公開されています。

女(趣里)は、 半焼けになった小さな居酒屋で1人暮らしていました。体を売ることを中年の男(利重剛)斡旋され、戦争の絶望から抗うこともで

© 2023 SHINYA TSUKAMOTO / KAIJYU THEATER

きず、その日を過ごしています。そんな女のところに空襲で家族をなくした子供(塚尾桜雅)が、 闇市で食べ物を盗んで暮らしていましたが、ある日盗みに入った居酒屋の女を目にし、そこに入り浸るようになります。また、その女のところに戦場で心に傷を負った復員兵(河野宏紀)がやってきます。三者でまるで家族のように暮らし始めるのですが、復員兵は約束のお金をつくることができず、出て行くことになります。

 2人になった女と戦争孤児ですが、女は身体を売ることをやめ、戦争孤児の男の子は、きちんとした職に就くように女に言われ、実行しようとします。

 ある日、戦争孤児は、テキ屋の男(森山未來)に誘われた仕事のために数日出かけると伝えますが、それは隠し持っていたピストルが必要な仕事といわれ、女に追い出されてしまいます。

 その後、テキ屋の男のいう仕事とは何だったのか、戦争孤児のゆくえは、そして、女は? ぜひ映画館に足を運んで観てください。

© 2023 SHINYA TSUKAMOTO / KAIJYU THEATER

闇市というものの暗さといかがわしさと力強さに漠然と惹かれていたという塚本監督は、「世界の動きが怪しくなってきた今、どうしてもつくらずに折れなかった、祈りの映画になります」と作品を語っています。戦後の闇と傷を負った人たちの祈りがきっと届くはずです。

中村恵里香(ライター)

20231125日(土)ユーロスペースほか全国順次公開

公式ホームページ:https://hokage-movie.com/

監督・脚本・撮影・製作:塚本晋也

出演:趣里、塚尾桜雅、河野宏紀、利重剛

2023年製作/95分/日本/配給:新日本映画社

© 2023 SHINYA TSUKAMOTO / KAIJYU THEATER

 

 


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