2013年11月4日17時36分、現在。
いま私は新宿区の戸山アパートの一室でこの原稿を書いています。
この「いま」という時に、まさに同時代にウクライナとロシアの戦争があり、パレスチナとイスラエルの戦争が起こっています。
そして、ミャンマーではクーデター後の国軍による抑圧支配が続き、市民の一部が武装して「国民防衛隊」を組織して、軍政に対抗する民主派の「統一政府」を設立しました。映画『ミャンマー・ダイアリーズ』には、軍政に反対して戦う市民の姿が描かれています。そこでは、若者たちが命を賭して自由を獲得しようとするすさまじい闘争の日々の様子を知ることができます。
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戦争や紛争が起これば、小さき者、弱き者(老いた者、女性、子ども、障害者など)が犠牲になります。
ウクライナの各地やパレスチナの特にガザ地区では、どれだけの母親と子どもが亡くなっていることでしょう。いまこの瞬間にもそのような惨事が起こっていることに、重く気が塞がれてなりません。
「戦争がもたらすもの」として教皇フランシスコから渡された写真には「亡くなった弟を背負い、焼き場で順番を待つ少年。この写真は、アメリカ占領軍のカメラマン ジョセフ・ロジャー・オダネル氏が原爆後の長崎で撮影したものです。この少年は、血がにじむほど唇を嚙み締めて、やり場のない悲しみをあらわしています。」(写真は、ジョー・オダネル『トランクの中の日本』小学館より)と説明されています。
このような少年が、いま限りなく生まれているのです。
私は先日、映画『ほかげ』を観ました。この映画には、日本の敗戦直後の闇市が描かれています。ここに登場する少年もまた、戦争(空襲)で両親を亡くした戦争孤児です。一人残されて生きていかねばならない少年が、闇市で姿を消していく最後のシーンが印象的です。
この映画を制作した塚本晋也監督は「世界の動きが怪しくなってきた今、どうしても作らずにはおれなかった、祈りの映画になります」と語っておられます。
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アニメーション映画の『君たちはどう生きるか』では、眞人君が積み木の一片を持って現実
の世界に戻ります。日本の敗戦から2年目に東京へ戻る眞人君が戦後を託されたことはなんだったのでしょう。
戦禍で母親を失った子どもの戦後もまた、小さき者に与えられた試練と言えるのでしょう
が、そんな試練など無くならなければいけない。いまこそ「平和」の意味を広く訴えなければならないときだと思うのです。しかし、私は少年の見つめる先に「希望を」と、ただ祈ることしかできない自分が悔しくてなりません。
日本から世界へ向けて、「平和をいまこそ! 子どもたちの命を守ろう!」というSNSでのウェーブを起こすことはできないだろうか?
鵜飼清(評論家)