最近、シェアハウスという言葉をよく聞きます。台所、ダイニング、トイレ、お風呂は共有で、個室のみという形態になんで魅力を感じるだろうと思っていました。テレビで観るシェアハウスは、大家さんがいるわけでもなく、居住者間で管理しているというものですが、私たちの時代の下宿とどう違うのか、その魅力は、私にはよくわかっていません。そんなシェアハウスを舞台に心温まる映画『シェアの法則』が公開されています。
東京・鬼子母神近くの一軒家に住む春山夫婦ですが、夫の春山秀夫(小野武彦)は、自らが営む税理士事務所に寝起きし、毎朝鬼子母神にお参りし、仕事にいそしむ毎日です。隣近所にも挨拶はしますが、決して親しくするという態度ではありません。一人息子・隆志(浅香航大)に対しても厳しく接しています。
一方、妻・喜代子は、自宅を改装し、シェアハウスを経営しています。年齢も職業も国籍もバラバラで、個性的な面々の住民に対し、相談に乗ったり、食事会を開くなど、皆の母親のような存在になっています。社交的な喜代子ですから、もちろん近所の人々とも親しくつきあっています。そんな喜代子には、仲のよい岩井登美子(鷲尾真知子)がよい相談相手となっています。
そんな中で、ふとしたことがきっかけで喜代子は腰を骨折する事故に遭ってしまいます。入院2か月となり、大家がいることを売りにしているシェアハウスの管理を夫・秀夫に頼むことになります。食事のお世話は登美子が担当することになります。
さっそく住民の状況や経理などを確認する秀夫ですが、いきなり、家賃2万円値上げをすると宣言するなど、波乱含みで始まります。
そんな中、昼は工場、夜はキャバクラで働く美穂(貫地谷しほり)が勤務先の工場でトラブルを起こし、工場の社長・鎌田康(久保酎吉)から呼び出しを受けます。
外資系開業勤務の加奈子(岩瀬顕子)、秀夫の甥小池一男(大塚ヒロタ)、ラブホテルの従業員で中国人のワン・チン(小山萌子)、劇団員の玉田幸平(岩本晟夢)たちのさまざまな事情を徐々に知るうちに秀夫にも変化が生じます。
シェアハウスの管理人・秀夫と住民たちの間は、どうなるのか、息子・隆志との関係は? さまざまな波乱を含み、物事が動いていきます。人に寛容であること、そして家族とは何か、シェアすることに生まれるものとは何かを問いかけてくる作品です。血のつながりのない人たちとの家族のような繋がりに心打たれるシーンも数々あります。ぜひ劇場に足を運んで観てください。
中村恵里香(ライター)
2023年10月14日(土)より、新宿K’s cinema、10月21日(土)より横浜シネマ・ジャック&ベティ ほか全国順次ロードショー
スタッフ:監督:久万真路、脚本:岩瀬顕子
出演:小野武彦、貫地谷しほり、浅香航大 、鷲尾真知子、宮崎美子、岩瀬顕子、大塚ヒロタ、小山萌子、上原奈美、内浦純一、山口森広、岩本晟夢、久保酎吉
企画:日穏-bion-/製作:ジャパンコンシェルジュ/後援:豊島区/宣伝協力:マジックアワー/配給:GACHINKO Film
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