歴史上の人物には、後世になって評価の変わることが少なくありません。今、“推し活”という言葉がはやっていますが、人それぞれ、推す人物が異なるのも面白いなと思っています。特に歴女と言われる人たちがどんな歴史上の人物の魅力をを聞いていると、さまざまな評価があり、本当にさまざまな意見があることに驚かされます。そんなことを映画で再発見する映画に出会いました。シェイクスピアの劇作で有名なリチャード３世に魅せられた女性の実話を元にした映画『ロスト・キング』をご紹介します。
フィリッパ・ラングレー（サリー・ホーキンソン）は、2人の息子を持つ主婦です。別居中の夫ジョン（スティーヴ・クーガン）と子育てを分担しつつ円満な関係を保っていました。一方、筋痛性脳脊髄炎を持病としていたことから、職場では昇進できず落胆していました。夫のジョンは、同乗し
つつも、「子どものためにも、自身のキャリアを危機にさらしてはならない」といいきかさせています。
そんな中、２人の子どもと共に、舞台『リチャード三世』を鑑賞したフィリッパは、主演俳優（ハリー・ロイド）の演技に強く心揺さぶられ、リチャード３世の幻影を見るようになります。
リチャード３世に興味を惹かれ、関する書物を読み進めるうちに、シェイクスピアの戯曲の影響で、悪名高き国王とされていることを知ったフィリッパは、汚名を晴らすべく、「リチャード３世協会」へ入会します。会員から「リチャード３世には墓がなく、亡骸は歴史の中で失われた」知らされます。リチャード３世の幻影が彼女の前に出現するのは、自分を探してほしいからだと考え、職場を無断欠勤し、リチャード３世の死の真相調査にのめり込んでいきます。
リチャード３世の亡骸は、大昔に取り壊されたレスターのグレイフライアーズ教会の敷地に眠っているという説があることを知り、アマチュア歴史
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家と連絡を取り、教会の跡地の手がかりを求め、歴史的文書を徹底的に調べ、大学の講義にも出席していきます。リチャード３世は王位を違法に継承したという講師の主張に異議を唱えますが、所属が「リチャード３世協会」と知った講師は、ただのファンクラブの会員と嘲笑します。
会場で、リチャード3世の直系子孫をＤＮA解析で見つけ出したと話す博士と出会います。彼女は、博士にグレイフライアーズ教会を見つけたいと訴えます。博士の助言により、街中を歩き回り、開発区画に取り残された社会福祉事務所の駐車場に踏み入れると、強烈な感覚に襲われ、下を見ると、そこには大きな“R”の文字が見えました。駐車場の係員に意味を尋ねると、「Reserved（専用駐車場）」だといわれてしまいます。
気を取り直し、遺骨を見つけ、王家の紋章を含め、敬意を払って埋葬するために、遺骨発掘に向けて資金調達を開始します。レスター大学の元職員たちの協力で発掘作業を行うためには、レスター市議会の支援と35,000ポンドの資金が必要だと知ったフィリ
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ッパは、レスター氏が主催する会議で自らの企画を提案します。会議ではアマチュア歴史家のいうこと出ることや多額の資金が必要なことから懸念を持つ意見があがりますが、市議会と大学から支援を受けられ、レスターシャー・プロモーション社が発掘資金全額負担の同意を得ることができました。
しかし、発掘の第一段階では何も発見されず、資金も取り下げられ手島いますが、「リチャード３世協会」メンバーの協力により、クラウドファンディングを立ち上げることにより、資金が集まります。2012年8月25日に再発掘が行われることになります。
さて、ここからは観てのお楽しみです。リチャード３世の遺骨は駐車場の“R”の文字のところで、見つかるのか、フィリッパの思惑通り敬意を払った埋葬がされるのか、なぜフィリッパの前にリチャード３世の幻影が現れたのか、ぜひ映画館に足を運んで観てください。
学者でもない１人の普通の主婦が、挑んだ挑戦の物語です。歴史上の本当の姿を私たちは発見する喜びを共に味わうことができます。
中村恵里香（ライター）
９月22日（金）より、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
公式HP：https://culture-pub.jp/lostking/
スタッフ
監督：スティーヴン・フリアーズ／脚本：スティーヴン・フリアーズ、ジェフ・ポープ／製作総指揮：ジェフ・ポープ／撮影：ザック・ニコルソン
キャスト
サリー・ホーキンス、スティーヴ・クーガン、ハリー・ロイド、マーク・アディ
2022年・イギリス・英語・108分・原題：THE LOST KING
© PATHÉ PRODUCTIONS LIMITED AND BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2022 ALL RIGHTS RESERVED.
配給：カルチュア・パブリッシャーズ
