歴史探偵 半藤一利展


半藤一利という人を知っていますか? 文藝春秋社の編集者であり、自らを“歴史探偵”と称していた文筆家です。私が半藤一利氏にお目にかかったのは一度きりです。今は休会中ですが、編集者の勉強会「本の会」に講師としてお迎えした際でした。その当時は、夏目漱石について調べていらした半藤氏は、「夏目漱石の印税」についてお話しくださいました。80代であったであろう半藤氏の精力的な姿が印象的でした。

 その半藤氏の展覧会が行われていると知り、いってみました。

なぜ半藤氏は、「歴史探偵」と自信のことをいっていたのか、そして特に戦争の歴史を探究していた原点は、何かなどに興味を惹かれてのことでした。その半藤氏は、激動の昭和史を正面から向き合い、令和3年1月に亡くなるその日まで執筆をしていたといいます。東京の下町に生まれ、昭和10年代は当時の少年がそうであったように少国民として育ち、東京大空襲で九死に一生を得た半藤氏は、文藝春秋時代に坂口安吾、伊藤正徳などから歴史に対する目を学び、何度も映画になった『日本の一番長い日』を描きます。そこから、昭和史の取材と研究に生涯を費やします。展示の中で、半藤氏自身の描いた絵や自筆原稿、書斎の再現など、いろいろ見るべきものがありましたが、私が行ってよかったと思ったパネルの言葉があります。

「歴史を楽しんで大いに学ぶ」と題されたそのパネルには、「1930年代、40年代の昭和史は教訓にみちています。大いに学ばなければならない。しかも歴史は専門家の独占物ではありませんから、あの時代について語り合い、明日の日本のために役立たせねばならないと思うのです。だれの言った名言であったのか忘れましたが、『愚者は経験を学び、賢者は歴史に学ぶ』と言います。人間の経験などタカが知れています。その意味からも、同じ過ちを避けるために、歴史を楽しんで大いに学ばねばなりません。」(『歴史に「何を」学ぶのか』ちくまブリマー新書、平成29年)

半藤一利氏の歴史を学ぶ目は、今の私たちに本当に必要な者なのかも知れません。

中村恵里香(ライター)

 

202315日(土)〜日(日) 昭和館 3階特別企画展示室

入場無料

開館時間:10:00〜17:30

アクセス:九段下駅すぐ

    〒102-0074 東京都千代田区九段南1丁目6−1

ホームページ:http://www.showakan.go.jp


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