高野豆腐店の春


尾道と聞いてすぐに思い出すのは、小津安二郎監督の「東京物語」、大林宣彦監督の尾道三部作と言われる映画等々、尾道を舞台にした映画はたくさんあります。あなたはどの作品が好きですか? 私にとって尾道が舞台と聞くとどうしても観たくなるほど、尾道はとても思い出深い土地です。まもなく、その尾道を舞台にした映画が公開されます。

 

尾道の下町風情のある町で職人気質の高野辰雄(藤竜也)と明るくて気立てがよいと評判の娘・春(麻生久美)は、豆腐店を営んでいます。毎日、陽が昇る前に作業場に入り、こだわりの大豆からおいしい豆腐を二人三脚で作っています。

ある晩、元々患っている心臓の具合がよくないことを医師に告げられます。医師からの言葉にショックを受ける辰雄ですが、診察室から出た辰雄は、落とし物をしてしまい、それをふみえ(中村久美)が拾ってくれます。

出戻りの一人娘春のことを心配し、地元の仲間、理髪店の繁(徳井優)定食屋の一歩(菅原大吉)、タクシー運転手の健介(山田雅人)、英語講師の寛太(日向丈)に相談し、春の再婚相手を探すため、内緒でお見合い作戦を企てます。

地元の駅ナカのスーパーに豆腐を納品していますが、スーパー側は、東京の支店にもと思っているのですが、頑固な辰雄は受けようとしません。そんなスーパーで、清掃員として働くふみえと再会します。

何人もの人と面接し、辰雄が選んだのはイタリアンシェフ(小林且也)です。作戦は一見成功したように見えましたが、春の思い人は、全く別の人物、豆腐の納品先駅ナカのスーパーの担当者で、辰雄が“ちんちくりん”と影で呼んでいる西田道夫(桂やまと)でした。納得のいかない辰雄は、春と口論になり、春は家を出てしまいます。

そんな時にふみえが豆腐店を訪れます。辰雄と春の関係は? 辰雄とふみえは? さまざまな人間関係の中、表面だけでは見えない人間模様が交錯し、新たな人間模様が展開していきます。

尾道の温かな風景が醸し出す雰囲気の中で紡がれる辰雄と春の優しい物語です。ほっこりとして、それぞれの人生の春に希望と感じられます。ぜひ映画館に足を運んで観てください。

中村恵里香(ライター)

8月18日(金)シネ・リーブル池袋、新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国公開︕

公式HP:takanotofuten-movie.jp

公式Twittertakanotofuten

監督・脚本:三原光尋/製作:桝井省志、太田和宏/プロデューサー:桝井省志 土本貴生 山川雅彦/撮影:鈴木周一郎(JSC)/照明:志村昭裕/録音:郡弘道/美術:木谷仙夫/編集:村上雅樹(JSE)  /音楽:谷口尚久/企画・製作プロダクション:アルタミラピクチャーズ

キャスト

藤竜也、麻生久美子、中村久美、徳井優、山田雅人、日向丈、竹内都子 菅原大、桂やまと、黒河内りく、小林且弥、赤間麻里子、宮坂ひろし

2023年/カラー/5.1ch/ビスタサイズ/120分 ©2023『高野豆腐店の春』製作委員会/配給:東京テアトル/製作:『高野豆腐店の春』製作委員会/助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業)、独立行政法人日本芸術文化振興会 


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