絵本の中の大切な仲間


 三條真史(絵本セラピスト)

 だんだんと雨の日が増えてきて、室内で過ごす機会が多くなってきたかと思います。雨に対してはそれぞれの捉え方があると思いますが、私はふと立ち止まる時間をくれるなと思うことが多いです。絵本をじっくり読み、様々なことを感じ取ってみてはどうでしょうか?今回は私から2冊の絵本を紹介したいと思います。

 

『へちまのへーたろー』 
二宮由紀子:文、スドウピウ:絵、教育画劇


とある親子にきゅうりに間違われてしまうへちまのへーたろー。次こそはヘチマとして認められようと様々な努力していきますがことごとくわかってもらえず、しまいには怖がられてしまいには走り去られてしまう始末…。いろいろと努力を重ねても服われないことに涙を流しますが、自分と似ているきゅうりがいるかもしれないと思い付き探しに行きます。すると、すぐにヘチマに似ている“きゅうりのきゅーたろー”に出会いました。互いに 似ているけど自分は自分だと主張し合うと、大きな声で笑い合い意気投合して肩を組んだのでした。

私はこのへーたろーの姿に喜怒哀楽がすべて詰まっているように思います。最後には分かり合える相手に出会えた喜び。認めてもらいたいのにわかってもらえない怒り。ありとあらゆる努力が無駄になってしまった悲しみ。次の目標に向かって努力していく楽しさ。日々、生きていく中ではいいことも起きれば、悪いことも起きます。時には自分ではどうにも変えられない現実に向き合うときも訪れます。そのたびにさまざまな感情や思いを抱くと思います。そのどの姿もへーたろーと重なり、勇気をくれます。

私自身が辛い時にはへーたろーも辛い現実を受けとめながらも進もうとする姿に励まされ、努力している自分自身を褒めて進もうとする姿に勇気をもらいました。私が読み聞かせをした方からは「自分も小さいことだけど頑張ってきたことがあり、それを認めてもいいのだと教えてもらいました。」とおっしゃっていました。きっと、へーたろーにはどの感情にも寄り添える姿があるからこそ、どの人の背中を押してあげられるのだと思います。私自身もへーたろーのように人の背中を押してあがられる存在になりたいとも思いますし、この絵本からたくさんの方が勇気をもらってもらえたらと思っています。

 

『ぬけちゃった』 
スティーブン・アントニー:作、せなあいこ:訳、評論社

 1日中、家の中でコンピューターに繋がっているビビちゃん。ある日、偶然にもコンセントが抜けて階段から落ちて、外に飛び出してしまいました。外の世界は知らなかったことがいっぱいで一日中遊んで楽しみました。しかし、お日様が沈んで家に帰ってきて、出会った友達とも別れました。家に戻ってから前と同じようにパソコンと繋がるのですが、外のことを思い出してばかりいたので自分でコンセントを抜いて外へ行こうとするのでした。

 ストーリーからも外の世界へ一歩踏み出していく勇気をくれる絵本ですが、描かれている色がさらに素敵です。家の中は白黒で表現されていて、外の世界は色鮮やかに表現されています。私自身、学校や仕事以外は家にいるだけの時期があり、その時は特に楽しいこともあまりなくまさに白黒のような世界でした。しかし、白黒の生活に嫌気がさした時にたまたま好きだった絵本を通して人と出会い、楽しいことや好きことを共有できる仲間が増えていきました。そんな出会いや繋がりの数々はまさにカラフルな世界でした。そして、カラフルな世界を知ったからこそ、安心感のある白黒の世界もより好きになりました。 

 一歩踏み出すことの大切さをこの絵本を通しても感じてはいますが、だからと言ってそれを強く主張したいというわけでもありません。1つしか知らないときには見えなかった良さを2つ知った時に気づけたと思っています。だからこそ、新しいことを知ってみるのもよいと思います。

 

 私はこの2冊からは「行動するからこそ見えてくるものがある」ということを知りました。行動すること全てが良い方向になるわけではないですが、へーたろーのように努力が自分の力になったり、望んでいたこととは違う意外な結果を生んだりすることもあります。ビビちゃんのように自分の世界だけでは知りえないことを知ることもあります。へーたろーもビビちゃんも私にとっては勇気をくれる大切な仲間なのです。それを今回皆さんにご紹介できたことが嬉しいです。よかったら絵本を通して私の素敵な仲間に触れてみてください。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

18 + nine =