17 世紀、イタリアのトスカーナ地方にあるペシアの町に、幼い頃から聖⺟マリアと対話し奇蹟を起こす少⼥がいました。その少女の名は、ベネデッタ・カルリーニ。6歳の時、両親に連れられテアティノ修道院に入ります。
18 年後、イタリアでペストが流⾏の兆しを⾒せていた頃、純粋無垢なまま成⼈したベネデッタ(ヴィルジニー・エフィラ)はある⽇、家族から逃れるため修道院に逃げ込んできた若い⼥性バルトロメア(ダフネ・パタキア)を助け、共に修道院で暮らすことになります。夢にイエスが現れ、「私の花嫁。私の元へ」と呼ばれます。⾃分はイエスの花嫁だと信じたベネデッタは、そのことを神⽗に告解をしますが、「痛みこそキリストを知る唯⼀の⽅法」と⾔われ、痛みに執着するようになります。その⽇を境にベネデッタは、全身が激しい痛みに襲われます。町中に響き渡るほどの叫び声で毎晩うなされるようになります。それを⾒かねた修道院⻑フェリシタ(シャーロット・ランプリング)は、バルトロメアを同室にして⾝の回りの世話をさせます。
そして、ある晩ベネデッタの前に十字架につけられたイエスが現れ、「私の手に合わせよ」と命じます。すると、痛みに耐えかね倒れると、聖痕が現れます。修道院⻑は、祈りのうちに現れた聖痕ではないと否定しますが、ペシアの主席司祭(オリヴィエ・ラブルダン)は、自分の野望もあって、聖痕と認めます。
聖⼥として⺠衆から崇められ、司祭の前でも奇跡を起こしたことから、ベネデッタ
は修道院⻑に任命されます。周囲に波紋が広がる中、ペシアでの権⼒を⼿にし、さらにバルトロメアと秘密の関係を深めていたベネデッタですが、神からの警告と意味される彗星が出現した晩、彼⼥に疑惑と嫉妬の⽬を向けていた元院⻑シスター・フェリシタの娘、シスター・クリスティナ(ルイーズ・シュヴィヨット)の⾝に耐えがたい悲劇が起こります。
ベネデッタの悪魔のような所業を教皇⼤使ジリオーリ(ランベール・ウィルソン)に訴えるため、フィレンツェへ向かいます。そこでシスター・フェリシタが⾒たものは、町中ペストの死体で溢れかえる様⼦でした。
ベネデッタを糾弾するためペシアの町を訪れた教皇⼤使が⽬にしたのは、棺に⼊りすでに天に召されたベネデッタでした。教皇⼤使⾃ら葬儀のミサを執り⾏っている最中、突然「天国から引き戻された。」とベネデッタが⽬を覚まし「⼤勢の⼈々がペストで死ぬ」とキリストからの予⾔を伝えます。
翌⽇、ベネデッタとバルトロメアの⼥性同⼠の情欲について教皇の審問が開始され、拷問されたバルトロメアはすべてベネデッタに強いられたものだと告⽩します。⼆⼈で使っていたマリア像もバルトメアによって差し出されます。
そんな中、シスター・フェリシタがペストにかかり、教皇⼤使も⾃⾝の異変を感じます。⽕刑台に向かうベネデッタですが、ペシアの町には更なる混乱と騒動が降りかかろうとしていました。
ここからは、ぜひ映画館に足を運んでご覧ください。ベネデッタとバルトメアはどうなるのか、そしてペシアの町は……。
この作品は17世紀に実際にいたシスターの話です。この作品に対する思いを監督のポ−ル・ヴァーホーベンは、「ベネデッタの物語の独特な性質に惹かれたんだ。17 世紀初めにレズビアンの裁判があったこと、裁判の記録や本書のセクシュアリティの描写がとても詳細なことにも感銘を受けた。そしてこの時代、⼥には何の価値もなく、男に性的喜びを与え、⼦供を産むだけの存在とみなされていたにもかかわらず、ベネデッタが⼿段はどうあれ、完全に男が⽀配する社会で、才能、幻視、狂⾔、嘘、創造性で登り詰め、本物の権⼒を⼿にした⼥性だったという点だ」と語っています。
ベネデッタの聖痕は本物だったのか、そして、17世紀という時代がまざまざと描かれた作品です。今とは全く違った時代の過酷さと、愛とは何かを語りかけてくれる作品です。
中村恵里香(ライター)
年2月17日(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開
公式ホームページ:https://klockworx-v.com/benedetta/
スタッフ
監督:ポール・ヴァーホーベン/脚本:デヴィッド・バーク、ポール・ヴァーホーベン/原案:ジュディス・C・ブラウン『ルネサンス修道⼥物語―聖と性のミクロストリア』
キャスト
ヴィルジニー・エフィラ、シャーロット・ランプリング、ダフネ・パタキア、ランベール・ウィルソン
2021/フランス・オランダ/仏語・ラテン語/131 分/R18+/原題:BENEDETTA/配給:クロックワークス
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