『ALLYアライになりたい~わたしが出会ったLGBTQ+の人たち』
小島あゆみ、かもがわ出版、2021年。
定価:1600円+税 186ページ
「ALLYアライ」という言葉を知っていますか。アライとは、性的マイノリティ(少数派)の「味方、支援者」のことです。英語の同盟「アライアンス」を語源とする言葉で「支援する側」と「支援される側」と線引きせず、同じ側に立ち、考え行動していくのがアライです。アライになることは、違いを受け入れ、差別や偏見に敏感になることでもあります。
著者は、米国人のホストシスターが同性と結婚したことをきっかけに、性的マイノリティの人たちのリアルな声を聴きます。LGBTQ+の意味も知らなかったため、本やインターネットで学び、ドラマ、映画などでその生き様を知ることで、マイノリティの問題はマジョリティ(多数派)の問題でもあると、そしてマイノリティが生きやすい社会は、すべての人にとって生きやすく、個人として尊重されるものと気づきます。
1970年代まで同性愛は病気とされ、その誤解や偏見のため、今でもLGBTQ+の人たちの多くは「本当の自分」を隠しています。カミングアウトには、想像をこえる勇気が必要で、気の遠くなるようなプロセスがあります。「なぜ自分は、他の人と同じではないのか」という「自己否定」に苦しみ、孤独とたたかっています。「人に知られたら死ぬレベル」と思う人も多く、その自殺率は高く、深刻な問題なのです。
同性と結婚できない不平等な法律は、LGBTQ+の人たちをとりまく差別や偏見を助長させています。結婚ができないために、どちらかが病気になったり、一緒に育てている子どもが手術になったり、そのような緊急時に愛する人のそばにいることが許されず、書類にサインすることもできないのです。そんな理不尽な現実を、マジョリティ(多数派)が、自分のこととしてとらえることが重要です。もしかしたら自分の子どもや孫が性的マイノリティであるかもしれません。「性的マイノリティの人に会ったことがないし、自分の周りにいないから関係ない」と思わず、あなたのすぐそばにいるかもしれないという発想が必要です。
多くの人とは違うこと、それを「かけがえのない個性」と考えられたらいいですね。自分と好みや考え方が違ったとしても、その存在を認めることが大切です。この本で、他者を理解するにはどうすればいいかという問いに「よかれと思って言ったことがその人を傷つけてしまったときに、それなら今度はこういう言い方をしたらどうだろう」と謙虚な気持ちで、試行錯誤を重ねていくこと、意識をアップデートし続けることです。決して相手を決めつけることなく、問い続け、行動を変えていくことです。その先に自分とは異なる他者を受容し、受容される相互理解が生まれるのではないでしょうか。」とあります。
かぞくのかたちもさまざまです。父ふたりでも母ふたりでも、シングルマザーでもシングルファザーでも子どもを愛し育てることには変わりがありません。さらに「だれもが何かしらのマイノリティであり、だれもがだれかのアライになれる」と考え、個人として尊重される社会をつくるために、まずは知ること、そのため第一歩となるのが本書です。
小島あゆみ
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