今日はヘレナ・コーン監督の映画「オードリー・ヘプバーン」をご紹介します。
オードリーと言えば、「ローマの休日」「ティファニーで朝食を」などの数多くの作品に登場し、そのきらきらした目の優しい笑顔と気品のある仕草はあっという間に彼女を銀幕の大スターにしてしまいました。
世界中で知らない人がいないほどの彼女ですが、本作品は、彼女のこころの中を友人や子ども・孫が語ってくれるドキュメンタリー作品です。
わたしも子どもの頃からオードリー・ヘプバーンが好きで彼女の映画はよく見ていました。
また彼女が痩せて太れないのは、戦時下の子ども時代の栄養失調のためと聞いていましたが、その頃からユニセフとの関わりがあったことをこの映画で初めて知りました。
銀幕の彼女の明るい笑顔にはつらさの影は全く見えませんでしたが、当時彼女は、飢餓だけではなく父親を慕い家族の愛に飢えていたことも、この映画で初めて知りました。
そんな戦時下の不安定な環境の中で育ったオードリーでしたが、彼女が持てる才能を精一杯前向きに開花させたのは、彼女の揺らがない意志の強さの賜物だったのでしょう。
この映画の中では、戦争の厳しい環境の中を生きていくこと以上に彼女が追い求めてきたものがはっきりと映し出されています。
彼女が生涯をかけて望んだもの。
それは優しさあふれる普通の家庭でした。愛の飢えた小さな子どものように。
ただ人生は思うように簡単にはならないものです。
普通の家庭を願っているだけなのに、思う方向になかなか向いてくれません。
そんな人生においても彼女はひたすら安らぎを求め平和な家庭を求めていきます。
こんなところにも戦争の悲惨な環境や、家族の愛を求める心の傷を何とか癒したいとの、
子どものようなオードリーが感じられました。
晩年ユニセフに関わっていきます。
貧しく飢餓の中にいる子どもたちに彼女が見たものは、きっと戦時下の自分の人生だったのでしょう。
オードリーは、自らの名声を生かしてユニセフの広告塔になります。
黒板にちびた白墨で、「I LOVE YOU」 と力強く書いて、真っすぐ彼女を見つめる子どもたちに向かって振り向いた時の笑顔がすごく素敵でした。
また、飢えて彼女の手の中で亡くなっていく子どもを見る目が本当に悲しげでした。
自分を省みずに活動している彼女は、いつしか苦しむ子どもたちに愛を伝えるおかあさんになっていきます。
それは彼女自身、子どもの頃に苦しみ、飢えた愛への渇望の裏返し。
そんな活動のなかで、彼女の前向きな力は彼女自身をも変えていった気がしました。
そして最後に自分の死にも、前向きに向き合う場面がでてきます。
自分の死が近づいているのを感じているのに、友人の辛さを心に留めて優しい言葉を投げかけます。
自分の辛さを超えて、すべてを人への愛に捧げる彼女が心を打ちます。
信じること、希望を持つことは、とうとう彼女自身を変えていきました。
主演映画の中の気品あるかわいいオードリー。
この映画は、そんな彼女の内面を浮き彫りにした作品でした。
わたしは更に彼女が好きになりました。
そして最後の場面。
オルゴールのようにゆっくり流れる「ムーンリバー」が心に響きました。
是非ご覧になってください。
あき(横浜教区)
2022年5月6日(金) TOHO シネマズ シャンテ、Bunkamura ル・シネマ他全国ロードショー
公式ホームページ:https://audrey-cinema.com/
公式Twitter:@audrey_cinema.com
監督:ヘレナ・コーン
キャスト:オードリー・ヘプバーン、ショーン・ヘプバーン・ファーラー、エマ・キャスリーン・ヘプバーン・ファーラー、クレア・ワイト・ケラー、ピーター・ボクダノヴィッチ、リチャード・ドレイファス他
振付:ウェイン・マクレガー
バレエダンサー:アレッサンドラ・フェリ、フランチェスカ・ヘイワード、キーラ・ムーア
100 分/2020 年/イギリス/5.1ch/ビスタ/字幕翻訳:佐藤恵子/原題:“Audrey”
配給:STAR CHANNEL MOVIES 協力:(公財)日本ユニセフ協会
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