作品展がファミリーをつくる!?~~カトリック関町教会の実践~~


石井祥裕(カトリック関町教会 教会委員)

アートをアットホームで、というテーマから、普通は家族を連想するかもしれませんが、ここは教会の話です。東京都練馬区の西の端に位置するカトリック関町教会では、2014年から「テレジア祭」という取り組みを行っています。教会内での「お知らせ」でも使う説明句は、「秋の教会文化祭」です。

幼きイエスの聖テレジアを保護の聖人とする関町教会の秋の文化祭として、このテレジアの記念日10月1日、そして、その名のもとになったアビラの聖テレジア(イエスの聖テレジア)の記念日である10月15日を目印として、この二つの記念日を囲む4主日、実質3週間をテレジア祭期間とする、教会の催しです。

2019年テレジア祭の様子(関町教会会報「こみち」283号より)

この期間、テレジアにちなむお話や朗読付きスライドショーの企画、歌や演奏を披露し、楽しむファミリーコンサート、知り合いのアーティストの公演、手作りケーキなどを分かち合うテレジアカフェといったイベントが連なり、地区ごとに何かの企画を提案し、奉仕するなど、地区内の交流も促進するものです。町内会のお祭りのような雰囲気といえるかもしれません。

そして、この期間中ずっと開かれるのが、自作の絵画や書、手芸品などを披露し合う作品展です。実は、テレジア祭がこれだけの長期間、実施されるものとなる一つのきっかけは作品展にありました。関町教会には、秋のバザー(恒例では11月初旬に開催)が伝統的にありました。その折、聖堂美術館と称して、油絵をたしなむ方々の作品を当日一日だけ展示するのが慣習でした。ところが、たった一日だけだと、都合が整わずにそのバザーの日に教会に来られないと絵を観賞することもできないまま終わってしまうという不都合がありました。それが、4主日にわたるテレジア祭期間に拡大されるように一つの理由でした。

2014年、油絵展示の伝統を継承しつつ、広く「作品展」として企画するにあたり、募集対象の幅も広げました。ペン画、水彩画、コラージュなど、各種素材によるアート、写真、俳句・短歌の色紙、種々の工芸品、木彫、大きなパッチワークなど、多種多様の作品を求めるようにしたのです。それらの募集、保管、管理、展示方法などを考えるのがまた大仕事。聖堂とホールの限られた空間をどのように展示するかが、毎年異なる作品種をもとに、スタッフの工夫のしどころとなりました。それらをめぐる“てんやわんや”も、また、楽しい一幕となり、協力する人々の新しい人脈が生まれることにもなりました。

なによりも、普段はすれ違うばかりか、あるいは限られた奉仕の役割を通じて接するだけの方々の中に、隠れた芸術的特技、隠れたセンスの煌めきがあることに驚かされたり、感心したり。新しい次元が、いつもの教会生活の中に開かれるのでした。

2019年テレジア祭の様子その2(関町教会会報「こみち」283号より)

昨年と今年は、コロナ禍でたくさんの人々が集うカフェやコンサートの企画は休止せざるを得ませんでしたが、作品展だけは、むしろ、巣籠生活の中で制作したものを披露し合いましょう、励みにし合いましょうと、呼びかけ、細々と、昨年も今年も継続しています。今年は、とくに、子どもたちの絵画も元気なメッセージを発しています。所属信徒にもいるプロの画家も、有力な仲間で、毎年傑作を出品し続けてくれています。

2014年の第1回から今年で8回目。継続に努めてきたこの作品展は、不思議と、教会の中に“ファミリー”を新たに作り出してくれていると実感します。作品が展示される聖堂や信徒会館のホールがほんとうに家だと感じることができるのです。“教会だから、それは、神の家族でしょ!”と、言いたいところですが、これを続けてきて思うのは、教会のメンバーがこのことを通して、ようやく“人間的な家族”になりつつあるのではないかということです。一人ひとりがなんらかの形でもっている芸術的感性(創作者としても、鑑賞者としても)を披露し合うことで、ようやく人間的に、全人的に、出会えているなと思えるからです。そして、……“人間的な家族”にならなければ、たぶん“神の家族”にもなりえないだろうな、ということを、うっすらと感じさせられているのです。

言い出しっぺの一人であった、管轄部門の担当者として、実に感慨深いところですが、そろそろ逃げ回っていた出品を強く求められるようになりました。来年、どうしましょうと早くも心配しているところです。

(写真は、白黒で伝わりにくいですが、2019年のテレジア祭の模様を伝える、関町教会会報『こみち』の誌面です。カフェやコンサートができていた、あの時が懐かしい!)

*作品展についてはカトリック関町教会のホームページにも折々、紹介されますので、ぜひご覧ください。

 


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