アシジの聖フランシスコの物語6


小平正寿(カトリック田園調布教会協力司祭)

ペルージャの捕虜時代なのか、釈放後なのかは伝記によって異なりますが、フランシスコは大病を得て、そこから快癒して外に出た時、以前のように自然の美しさを楽しめなくなった自分を発見しました。友人たちとの放埓な生活にも空しさを覚えるようになり、ときおり洞窟などに籠って祈りや瞑想を行うようになりました。

あるとき、それまでは近づくことを恐れていたハンセン氏病患者に思い切って近づき、抱擁して接吻しました。すると、それまでの恐れが喜びに変わり、それ以後のフランシスコは病人への奉仕を行うようになりました。

また、ローマに巡礼に出かけて、乞食たちに金銭をばらまき、乞食の一人と衣服を取り換えて、そのまま乞食の群れの中で何日かを過ごしたという伝記もありますが、これは史実かどうか疑わしいとも言われています。

アシジ郊外のサン・ダミアノの聖堂で祈っていたとき、磔のキリスト像から「フランシスコよ、行って私の教会を建て直しなさい」という声を聞きます。これ以降、彼はサン・ダミアノ教会から始めて、方々の教会を修復していくのです。

父の不在中、フランシスコは商品を持ち出して近隣の町で売り払い、その代金をサン・ダミアノの下級司祭に差し出しました。帰宅してそれを知った父親は怒り、家業の商売に背を向けて自分の道を進もうとする息子との間に確執を生むことになります。最後には、アシジ司教の前で父子は対決するのですが、フランシスコは服を脱いで裸となり、「全てをお返しします」として衣服を父に差し出し、フランシスコにとっての父は「天の父」だけだとして親子の縁を切るのです(つづく)。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

4 × 1 =