『米軍(アメリカ)が最も恐れた男 カメジロー不屈の生涯』


今、沖縄では辺野古埋め立ての問題で国と争っています。県民投票でいらないという基地を、なぜ政府はごり押しのようにつくろうとしているのでしょうか。こんな疑問をもつのは、私だけなのでしょうか。第2次世界大戦後、沖縄は日本の領土ではなく、アメリカによって統治されていました。その時に住民自治を取り戻し、沖縄の戦後の歴史をきちんとふまえ、基地のない沖縄のために動こうとした男がいました。その男、瀬長亀次郎を描いたドキュメンタリー映画『米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー』という映画が2年前に公開され、話題を呼びました。

そして、このほど、瀬長亀次郎の230冊に及ぶ膨大な日記をもとに、改めて政治家としてだけでなく、ひとりの家庭人としての瀬長亀次郎の背景も描きつつ、彼はなぜアメリカに恐れられたのかを描いたドキュメンタリー映画『米軍(アメリカ)が最も恐れた男 カメジロー不屈の生涯』が公開されます。

この映画の中では、カメジローの生涯を描いていく中で、カメジローの言葉が次々と私たちの心に突き刺さってきます。その一例を挙げてみましょう。「沖縄は敵国だから、民衆の子はない。権力に反対するスタンスをとるしかない。沖縄の人間がすすむべき道は3つしかない。刑務所への道。自殺する道。戦っていく道」。これがアメリカに統治されている時代の言葉です。

1954年10月6日にカメジローは逮捕されます。逮捕しに際し、「学ぶべき真理がある。瀬長が怖いのではない。瀬長を奪還する大衆が怖いのだ」

そして勾留が解かれた後もカメジローは、今でいう県知事になりますが、あらゆる手段を講じてアメリカは権力の座からカメジローを引きずりおろそうとします。そんななか、カメジローの言葉です。

「自治は神話であり、沖縄には存在しない」

この言葉に私は打ちのめされました。私たちは言葉を発する自由があります。自治権もあります。でも沖縄にはそんな権利すらなかったことを私たちはあまり知らされていません。戦後、沖縄は、長い間アメリカに統治され、自由すらなかったという事実を私たちはどう受け止めたらいいのでしょうか。

本土復帰がなされても沖縄の基地は未だ存在し続け、アメリカ兵による事件も続いています。カメジローは現在のオール沖縄は、「小異を捨てずに大同につく」ことが必要だといい、「人を殺す土地は沖縄には必要ない」ともいっています。

 

そしてカメジローは沖縄出身者で初めての国会議員になります。佐藤栄作総理との討論は見物です。

この映画は、沖縄の歴史でもあります。そして、私たちが新たに沖縄問題を他人事ではなく、考えなければならないことを訴えています。瀬長亀次郎という人が周囲の人から「カメさん」とか「カメジロー」と親しみを込めて呼ばれるのはなぜかもこの映画を観ると、わかります。ただただ戦った人というだけではなく、親しまれた瀬長亀次郎の魅力をのぞいてみてはいかがでしょうか。

2019年8月17日(土)より、沖縄・桜坂劇場にて先行公開、8月24日(土)より、東京・ユーロスペースほか全国順次公開

公式ホームページ:http://kamejiro2.ayapro.ne.jp/

監督:佐古忠彦/撮影:福田安美/音声:町田英史/編集:後藤亮太/プロデューサー:藤井和史、刀根鉄太 
語り/山根基世、役所広司
テーマ音楽/「Sacco」「Gui」(作曲・演奏:坂本龍一)
2019年/日本/日本語/カラー(一部モノクロ)/ビスタ/ステレオ/128分/配給:彩プロ/© TBSテレビ

 


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