私のようなクリスチャンホームに生まれ、物心ついたときにはカトリック信徒だった人間にとって、カトリックと本気で正面から向き合うのが初聖体のときです。洗礼の記憶は乳児期なのでまったくなく、カトリックのことを正面から向き合って勉強し始めるのが教会の日曜学校でシスターから教えられる聖書の話です。だから、という訳ではないのですが、1年間勉強し、真っ白なドレスに身を包み、ミサでいただく初めてのご聖体は憧れでもありました。
そんな記憶をよみがえらせる映画に出会いました。そのドキュメンタリー映画『祝福~オラとニコデムの家~』をご紹介します。
ポーランドのワルシャワ郊外、セロックという街に14歳の少女オラは住んでいます。オラの父親はお酒で問題を抱え
ています。弟のニコデムは、自閉症児です。母親は、違う男性と離れて暮らしています。学校に通いながら、家事をこなし、弟の面倒を見るオラが母親の役割を一手に担っています。ニコデムは、ベルトもうまく締められない状況で、あらゆる場面でオラの手助けが必要です。
一般的に初聖体は、7歳か8歳で受けるものですが、ニコデムは13歳になってやっと受けることができるようになります。ただし、初聖体を受けるには、その前の試験に合格しなければなりません。そのためにオラはニコデムに勉強を強います。厳しく、接するオラの姿は必死です。なぜそんなに必死なのかというと、離れて暮らす母親が初聖体の儀式に来てくれれば、もう一度家族が一つになれると信じているからです。
初聖体は無事受けられるのか、母親は来てくれるのか、そしてオラの考える幸せはやってくるのかは観てのお楽しみです。監督のアンナ・ザメツカは、当初カメラを受け入れようとしなかったオラと正面から向き合って、カメラを受け入れさせることから始めたといいます。それには1年以上の時間をかけたそうです。この映画はカメラを受け入れたオラの姿が如実に出ています。また、監督は、この映画について、「『ヘンゼルとグレーテル』は私のお気に入りの物語の一つでした。この映画『祝福~オラとニコデムの家~』は親が自分の役割を果たせない世界の森で、彼らの道を探すヘンゼルとグレーテルの、非モノクロームで描かれたリアリスティックな物語なのです」と語っています。
初聖体を舞台に、家族の物語が描かれています。ぜひ、映画館に足を運んでみてください。
(中村恵里香、ライター)
6月23日ユーロスペースほか全国順次公開
公式ホームページ:http://www.moviola.jp/shukufuku/
脚本&監督:アンナ・ザメツカ
撮影監督:マウゴジャータ・シワク
編集:アグニェシュカ・グリンスカ、アンナ・ザメツカ、ヴォイチェフ・ヤナス
原題:Komunia|英語題:Communion|2016年|ポーランド|75分|配給:ムヴィオラ