恋するレストラン


食は私たち人間が生きていくうえで、欠かせないものです。食べものを扱った映画はたくさんありますが、今回ご紹介するのは、「恋するレストラン」。日本では公開されていません。この映画、実はまじめに食を扱った映画ではありません。なので、まじめに扱ったものを期待した人には最初に謝っておきます。

舞台はオランダ。父親の期待を一身に受けて育ったモロッコ人青年ノルディップ(ムニール・ヴァレンタイン)は、すごくまじめで、優秀な成績を収めて高校を卒業しました。周りからも将来を期待され、父は医者にと願っています。でも、学業に希望を見出せない彼は父親に内緒でホテルの厨房でアルバイトを始めます。

このホテルのレストラン、とにかく騒々しいし、汚いのです。もし日本にこんなレストランがあったら、閑古鳥が鳴くのではないかと思ってしまうほど。シェフは酔っ払いだし、ほとんどが正規雇用ではないし、働く人間は、セルビア人あり、ユーゴスラビア人あり、トルコ人ありですごく多国籍です。そこでは皿洗いから始めることになります。その厨房には、暴君のような料理長、先輩風を吹かせる料理人など海賊船を思わせる荒くれ者の巣窟です。

流しやその周辺には汚れた食器や鍋が山盛り。正直言って、私ならこんなところで働きたくないなと思ってしまうほど。でも、その職場でウェイトレスのアグネス(ブラハ・ファン・ドゥーシュバーグ)と出会ってしまい、一目惚れをしてしまいます。アグネスの気を引きたいばかりに、厳しい仕事にも黙々と取り組むノルディップです。

このあとはぜひ映画を観て下さい。2人の恋愛はどうなるのか。ノルディップの職場の様子は。そして、父親を初めとする家族との関係は……。

厨房を舞台にした人間模様を楽しめる恋愛コメディですが、汚い厨房でも、必死に文句を言いつつ働く人たちの姿が如実に出ています。

中村恵里香(ライター)

【スタッフ】

監督:マルティン・コールホーベン/脚本:マルコ・ヴァン・ゲフィン
キャスト:ムニール・ヴァレンタイン、マルコ・ヴァン・ゲフィン、ヤヒーラ・ゲイール
製作国:オランダ/上映時間:82分/原題:HET SCHNITZELPARADIJS/製作:2005年/DVD発売:ポニーキャニオン

 


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