ミサはなかなか面白い 49 神の民の祭司職とは?


神の民の祭司職とは?

答五郎……さて、前回からいよいよミサの奉献文の部になり、冒頭の対話句と叙唱のところに入ったね。その対話句が原文では、会衆の「それは、とうとく、正しいことです」で終わるのが伝統だった。叙唱でも「まことにとうとい大切な務め」といった言い方が出てくるのと関係しているのだがね。

 

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問次郎……はい、その流れで「さいししょく」(祭司職)という用語が出てきたので、お尋ねしたいと思いました。

 

 

答五郎……そうだったね。簡単にいえば「祭司」とは文字通り、神への礼拝を司る人のこと、「祭司職」とはその務めそのものを指すことばだよ。祭儀の司式者といってもいいかな。

 

 

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問次郎……「司祭」も同じ漢字の組み合わせですよね。前後が違うだけで。

 

 

答五郎……そう。だからときどき間違えられる。もちろん、意味が重なっているときもあるから、ややこしいのだけれど、教会では「キリストの祭司職」とか「神の民の祭司職」という言い方をしても、キリストの司祭職、神の民の司祭職とはいわないのだ。

 

女の子_うきわ

美沙……祭司という用語は、旧約聖書でもときどき見ました。それとキリストの祭司職との関係はどうなるでしょうか。

 

 

答五郎……そう、旧約時代、神の民イスラエルの生活が主である神から授けられた律法を中心にかたちづくられていくなか、礼拝祭儀を司る職務が祭司と定められていたのだね。

 

 

女の子_うきわ

美沙……福音書を読んでいても、祭司長とか大祭司とか祭司長とかという人が出てきますね。

 

 

答五郎……そう、それが古代ユダヤ教としてだんだん発展してくるなかで、大祭司とか祭司長とか細かな位階もできていたようだ。ただ、キリストの祭司職という言い方がされても、キリストがそれらの祭司制度を引き継いだというわけではないのだ。

 

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問次郎……大祭司、そして祭司長たち最高法院の人たちにイエスは死刑を宣告されたのですよね(マタイ26 ・68他並行箇所参照)。

 

 

答五郎……まさにそれは象徴的でね。古代イスラエル、それを継ぐ古代ユダヤ教の祭司制度とは、キリストは根本的に断絶している。キリスト教から見れば、古い祭司制度はそこでいわば死んで、全く新たなキリストによる祭司制度が始まったのだ。

 

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問次郎……どういうことでしょうか。

 

 

答五郎……旧約の祭司は神殿でいけにえをささげるのが務めだったのだが、イエス・キリストの場合、前にも見たように(ミサはなかなか面白い 44「あがない」の意味を探ってみよう/ミサはなかなか面白い 45「罪のゆるし」としての「あがない」)、人類の贖いのために自分自身をささげただろう。十字架の出来事がそれだ。そのことを中心として、人類を再び父である神に結びつけた、つまりイエス・キリストによって神と人の間に新しい契約が結ばれたのだ。

 

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問次郎……それが「新約聖書」の「新約」のことでしたね。

 

 

答五郎……そして、そのようなキリストの働きや役割を指して「キリストは神と人の仲介者」という言い方もする。その仲介者としての働きのうちで、神の恵みを人に分かち合わせ、人の神への感謝や賛美や祈りを伝える役割を指して「キリストの祭司職」というのだ。その働きが根源的だから「大祭司キリスト」という言い方もある。このあたりのことは、新約聖書の「ヘブライ人への手紙」が詳しく論じているので、ぜひ読んでほしいな。

 

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問次郎……では、キリストの祭司職をもとにして、神の民の祭司職があるのですね。キリストにつながっている人たち、信者みんながもっている祭司職ということですね。

 

 

答五郎……キリストの祭司職に基づく信者全員の祭司職を今は「共通祭司職」というのだよ。ミサをささげているのが信者全体だといわれるときの土台がそれだ。その中でもさらにコアな奉仕を神と信者たちにする司教・司祭・助祭のいわゆる聖職者の務めは「奉仕的祭司職」といわれる。

 

女の子_うきわ

美沙……キリスト教でいう「祭司」というのはもっと大きな広がりや深さをもっているのですね。

 

 

答五郎……そういうことなのだ。ちょっと固い話が続いたし、式文の流れに戻るために、ここで祈りに耳を傾けてみよう。美沙さん、復活祭に唱えられる叙唱「復活 一」を読んでみてもらえるかな。

 

 

女の子_うきわ

美沙……これですね。「聖なる父よ、いつでも、また特にこの日に、あなたをたたえ祝うことは、まことにとうといたいせつな務めです。わたしたちの過越キリストは、世の罪を取り除かれまことのいけにえの小羊、ご自分の死をもってわたしたちの死をうち砕き、復活をもってわたしたちにいのちをお与えになりました。神の威光をあがめ、権能を敬うすべての天使とともに、わたしたちもあなたの栄光を終わりなくほめ歌います。」

 

答五郎……ここで「まことにとうといたいせつな務め」と唱えているのは、「わたしたち」つまり神の民の祭司としての務めを神ご自身の前で確認し、その自覚を表しているということがわかるだろう。

 

 

女の子_うきわ

美沙……キリストが何をしたのか、贖いのいけにえであるという意味も鮮やかに告げられていますね。

 

 

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問次郎……美しい流れの祈りとは思いますが、ここで「天使」が出てくるのが疑問といえば疑問です。

 

 

答五郎……それはもっともだ。この叙唱の最後は「感謝の賛歌」につながっていくところでもあるので、それも合わせて「ミサにおける天使とわたしたち」について、次回、考えることにしよう。

(企画・構成 石井祥裕/典礼神学者)


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