《対話で探求》 ミサはなかなか面白い 33:信仰宣言で唱えられる信条とは?


信仰宣言で唱えられる信条とは?

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答五郎……「ことばの典礼」を考えるようになって13回目。少し先へ進めて、次に「信仰宣言」というところを見てみよう。

 

 

 

瑠太郎……はい、昔からのキリスト教の信仰をまとめた信条というものが唱えられますね。

 

 

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答五郎……日本では「使徒信条」が唱えられることが多いかな。もともとここは、「ニケア・コンスタンチノープル信条」を唱えるところだったのだ。クレドと呼ばれてね。クレドとは「(わたしは)信じます」という意味のラテン語で、その信条の冒頭にくる言葉だったので、それが略称となったのさ。今は、「使徒信条」も唱えることができるということになっている。

 

聖子……見学した教会では月一度、「ニケア・コンスタンチノープル信条」を唱える習慣だったような気がするわ。なんか、だらだらと長く唱えるのだなあと思ったわ。

 

 

瑠太郎……「ニケア・コンスタンチノープル信条」というのは、歴史でもならうニケア公会議 (325年)、続くコンスタンティノープル公会議(381年)をとおして出来た信条ですよね。三位一体をめぐる論争を終結させて全教会の統一の正統信条になったとか。

 

 

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答五郎……ほう、よく調べたね。

 

 

瑠太郎……ヨーロッパのキリスト教の歴史は、なんとか勉強しているので。

 

 

 

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答五郎……ミサという典礼祭儀が大きなものになっていく時代にこの信条も生まれたのだけど、ミサに入ったのは、コンスタンティノープルの典礼で6世紀の初め頃だったといわれている。その習慣がヨーロッパ、つまりイベリア半島に伝わり、そこからブリテン諸島のアングロ・サクソン人の教会へ、やがてアングロ・サクソン人の宣教師を通してフランク王国、そしてヨーロッパ全体に広がっていく。

 

 

聖子……ヨーロッパも最初からキリスト教だったわけではなく、この時代にまだキリスト教が広まっていたのね。

 

 

 

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答五郎……そう、日本の歴史でいえば、仏教が伝来して、全国に広まっていくのと同じような時代だよ。

 

 

瑠太郎……今の話だと、ローマのことが出てきませんでしたけど。

 

 

 

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答五郎……よく気がついたね。そうなのだ、ローマの教会で、ミサで唱えられるようになったのは11世紀初めとわりと後からなのだよ。

 

 

聖子……「使徒信条」っていうのは?

 

 

 

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答五郎……これはね、西方教会の伝統的な信条で、もともとはローマ教会の信条から発展したものといわれている。使徒伝来の信条という伝承というか、信頼感をこめて伝わっていったらしい。今の形のものが出来上がるのは8世紀頃、つまりカロリング朝のカール大帝(シャルルマーニュ)の宗教政策と関係があるらしい。

 

 

聖子……あらっ、このAMORの齋藤さんのグレゴリオ聖歌の話ともつながっているのかしら。

 

 

瑠太郎……そんなに古いものなのに、ミサでは使われていなかったのですね。

 

 

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答五郎……そうなのだけれど、むしろ信徒の日常の祈りには使われていたらしい。洗礼準備のためにキリスト教の教えを勉強するときの教材のような役割を果たしていたようだ。そのような信仰の教えの要綱、カテキズム、訳して要理というけれど、その底本のような役割をもしていたらしい。今もその伝統があるのだ。

 

瑠太郎……西方世界の信仰教育の伝統を代表する信条ということなのですね。

 

 

 

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答五郎……信条というのは、初代教会で洗礼式が形作られるなかで、問答型の信仰宣言をもとに発展したらしく、それぞれの教会で独自の形式があったようなのだ。ニケア・コンスタンチノープル信条もそのような形式を借りて、公会議が宣言する信条、つまり公会議信条に仕上げられたのだよ。異端説に対して教会の正統信仰を代表する信条という役割も新たにもつことになったわけだ。

 

 

聖子……きょうは、すっかり歴史のお勉強ね。でも、面白いわ。信条って、初めから決まりきったものと思っていたけれど、歴史の中でだんだん発展してきたということね。

 

 

 

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答五郎……それとね、信条の原語はラテン語ではシンボルムといって、ギリシア語のシンボロンから来る言葉なのだ。「証明するしるし」という意味が関係しているらしい。現代のシンボルにもつながる言葉だけれどね。つまり、信条とは「キリスト者であることを証明するしるし、キリスト教の信仰を証明するしるし」ということになるかな。しるしだから、わりと簡潔に信仰の内容を表しているのだよ。

 

瑠太郎……たしかに信仰の要約だなと思います。ニケア・コンスタンチノープル信条にしても、途中少し詳しいところがありますけれど、やはり要約ですよね。

 

 

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答五郎……そうだね、そうかもしれない。ラテン語の文章なんかは、すっきりとしているからね。

 

 

 

聖子……ひょっとして、日本語に訳すと長く感じるようになるのかしら。

 

 

 

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答五郎……それもあるかもしれない。いずれにしても、第2バチカン公会議後の現在のミサになって、ニケア・コンスタンチノープル信条だけでなく、使徒信条も唱えることができるものとなった。それぞれに歴史的な意味があると思うのだ。次回は信条をミサで唱える意味をもっと考えてみよう。

(企画・構成 石井祥裕/典礼神学者)


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