「パトリオット・デイ」


今世界の各地でテロといわれる殺戮が行われています。そんな不穏な状況の中、2013年4月15日に起きたボストンマラソンのテロ事件を扱った映画が公開されることになりました。

この事件、ニュースから流された衝撃的な映像が今もこころに焼き付いています。しかし、テロがあったことと、犯人がつかまったことだけが日本ではニュース等で流されました。その裏にどんなことがあったのか、私たちが日本にいるからなのか、それともアメリカでも同じ扱いなのか、知る術がありませんでした。

4月15日というのは、アメリカでは「愛国者の日」という祝日で、英語でパトリオット・デイというのだということも、無知な私はこの映画で知りました。この記念日を祝して、アメリカで最も古い町ボストンではマラソン大会が開かれるようです。

© 2017 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

第117回ボストンマラソンのスタートの日、ボストン警察殺人科の警部トミー・サンダース(マーク・ウォールバーグ)は警備係としてボストンマラソンのフィニッシュ地点にかり出され、警備をしているところで、爆発事件に遭遇します。この映画、ストーリーをお話しするよりも、さまざまな人間関係をさらっと流しながら、核心を突いた演出がされていますので、まずは映画を観て下さいとお伝えしておきます。

そこで、印象的な台詞のシーンをご紹介し、この映画の誘いにできればと思います。

犯人の一人、兄のタメルラン・ツァルナエの妻が警察に拘束され、尋問を受けるシーンで「私たちイスラム教の信者の妻たちには2つの道しかない。“戦いと服従”」といいます。そして、その戦いと服従は夫に対してと神に対してだというのです。イスラム教という宗教には女性は髪を隠さなければならず、聖堂には入れない宗教といった漠然としたイメージがありますが、ここまでいわなければならないほど、女性に厳しいのかと驚きを感じました。

一方、主人公トミー・サンダースは、犯人の一人を追い詰めていく中で、同僚に自身の経験を吐露した後、「悪魔と戦う武器はひとつしかない。それは愛だ」といいます。愛を伝え合うのに一番有効なのは、抱きしめることだともいうのです。

これは宗教観の違いかもしれませんが、後者のほうにどうしてもこころが惹かれます。

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テロと戦うその他大勢になりがちな警察官とFBI職員たちの犯人を追い詰めていく姿にもこころ震えるものがあります。すべてを一から映像化するのではなく、ドキュメンタリータッチで実際の映像を交えながら作られる手法のとりこになること請け合いです。

監督はこのコーナーで4月にご紹介した「バーニングオーシャン」を手がけたピーター・バーグです。実際の事件を見ているような迫力があります。

それともう一つ、映画のストーリーが終わった後に実際に事件に遭った人たちや事件に関わった人たちの証言がありますが、これにも迫力があります。実在の事件を扱った映画の難しさを越えた愛のものがたりがここにはありました。

 

 

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監督:ピーター・バーグ
出演:マーク・ウォールバーグ、ケヴィン・ベーコン、ジョン・グッドマン、J・K・シモンズ、
ミシェル・モナハン

原題:PATRIOTS DAY /2016年/アメリカ/カラー/シネスコ/5.1ch/2時間13分
日本語字幕:松崎広幸
配給:キノフィルムズ
公式サイト:www.patriotsday.jp

 


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