スペイン巡礼の道——エル・カミーノを歩く 15


古谷章・古谷雅子

 

9月16日(金)第2日目 曇りのち雨 <行程27km/累計53km>

ロンセスバジェス~ララソーニャ

6時ころに起き出して出発の準備。昨年とは異なり寒いので長袖シャツを着た。アルベルゲは、朝には部屋を出るきまりがあるので、朝食を摂るため急いで荷物をすべて持ってレストランに行った。石造りの建物だけあって雨音は全く聞こえなかったのだが、昨夜はだいぶ雨が降ったらしく路面は濡れていた。

ヘミングウェイが滞在していたブルゲテ

その後、ビロウドモウズイカやアザミがドライフラワーになっている牧場沿いの長閑な道を歩き、ヘミングウェイが鱒釣りのために滞在していたというブルゲテという小さな村を通過した。村の近くの川のところにはしっかりとした釣り用の装備に身を包んだ釣り師がいた。

いくつかの小川を越えた後は森の中のアップダウンを繰り返す道になったが、立派な石畳の舗装がされていた。最近相当の予算をかけて整備したらしい。途中、2002年にこのあたりで遭難死した日本人男性Yさんの慰霊碑を見た。64歳ということだった。

昨日もそうだったが、道端には靴擦れができたらしい巡礼者がそこかしこに座り込んで踵にテープを巻くなどしていた。しかし、そのような巡礼者は淘汰されたのか、靴擦れに慣れたのか、三日目以降はほとんど見かけなくなった。

ロンセスバジェスから20km以上歩いた所にあるスビリという村で泊まる人が多いようだったが、私たちはさらに5kmほど先のララソーニャまで行くことにした。明日の行程を短くすれば、牛追い祭りで有名なパンプローナに昼ごろに到着して町をゆっくりと見て回ることができるからだ。

静かな林の中を歩く

スビリを過ぎると雨が降り出した。結構な降りようなので雨具を上下着た。

ララソーニャも小さな集落だ。村はずれの1軒だけの公営アルベルゲで宿泊手続きを済ませると、道路を挟んだ別棟に案内された。本館に泊まれるのは早く着いた人だけらしい。

雨もほとんど上がったので半そでシャツの上にファイントラックの#3を着ただけで外に出た。村にある1軒だけの店で行動食のビスケットなどを買い、日本から来たというと主人がワインをごちそうしてくれた。店先のテーブルで他の巡礼者と飲んでいるうちに雨脚が激しくなってしまった。帰り道で見かけたレストランで夕食の予約をしてアルベルゲに戻ると、濡れそぼった章は寒気がしてきた。慌ててシュラフに入り、毛布も掛けて1時間以上ちぢこまって寝るとだいぶ回復した。

7時に予約しておいたレストランに行くと、考えてみれば当然のことだが、アルベルゲで同宿の巡礼者でいっぱいだった。見知らぬ者同士だが全員がそろってから一斉開始、一斉終了のディナーである。社交会話でにぎやかな夕食になった。ここで一緒だった人たちは、前日に凄まじい風の中でピレネー越えをし、また今日は通常よりも長めの行程を歩き、第一の山場を越えたという一種の連帯感から、食卓に祝祭気分が盛り上がっていた。

ロンセスバジェス 7:25 ~ ブルゲテ 8:05 ~ ビスカレッタ 10:15 ~ スビリ 12:55 ~ ララソーニャ 2:20

 


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