もうひとつのイエスの系図


前回マタイ福音書冒頭1章1節から17節までのイエスの系図について、そこに出てくる5人の女性について述べた。

イエスの系図についてはもうひとつルカ3章12~38節にもある。読み比べてみるとその違いはすぐにわかる。

マタイの系図は、アブラハムから時代を下ってきてイエスに至る系図であるが、ルカはイエスから人祖アダム、さらに神に至るまでさかのぼっていく。

これは何を意味するのか、マタイは明らかにユダヤ人を対象に意識していてイエスがダビデの子孫であることを強調している。ルカはユダヤ人に限ることなく人祖までさかのぼり、「すべての民はみな神の子」ということを示しているのであろう。

ここまではまだいい。問題はその系図に示された人物の名前である。アブラハムからダビデまでは両方ともそんなに違わないのだが、ダビデの子から後がほとんど一致していない。イエスの祖父から違っているのである。ヨセフの父親はマタイの系図ではヤコブであるが、ルカの系図ではエリとなっている。
このことはこの系図が矛盾をはらんでいるいいかげんな系図であるということを示しているのであろうか。

しかしもしこれがいいかげんな系図であったとしたら、キリスト教と対立したユダヤ教などからこの食い違いを非難されてしかるべきであるが、実際はそういうことはなかった。この系図が間違いを含んだいいかげんなものではないということはこの歴史が証明しているといえるだろう。

ではこの食い違いは何を意味するのであろうか?

それはネット上で「イエスの系図」「マタイ」「ルカ」で検索してみるとすぐにわかる。

つまり、マタイはヨゼフの系図を示し、ルカはマリアの系図を示しているということらしい。

だからマタイでは、ダビデの子はソロモンで、その子孫には歴代の王の名が挙がっているのに対して、ルカではソロモンの兄弟ナタンがあげられ、王の名前は出てこない。全く別系統の系図ということになる。

聖書は決して誤りのない完璧な書ではない。4つの福音書には「食い違い」がけっこうたくさんある。なぜそれが食い違っていて、それをとおして福音の記者たちが何を言おうとしているのかを想像することは聖書を面白くよむための秘訣であるような気がする。

ダビデの星

ダビデの星

ダビデの星とはユダヤ教、またはユダヤ民族を象徴するシンボル。二つの正三角形を逆に重ねた六芒星(ヘキサグラム)といわれる形をしていて、イスラエルの国旗にも採用されている。

ただし、ダビデの星がユダヤのシンボルとしてポピュラーになったのは17世紀からだといわれている。

もともとユダヤ教のシンボルとして使われていたのは「7つの枝の燭台(メノラー)」であった。

menorah


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