「変わらない神様」と「変わりゆく人間」――インターネット時代の宣教に不可欠なこと


日刊キリスト新聞クリスチャンプレス ディレクター MARO(横坂剛比古)

宣教に使われるメディアというのは、聖書の時代から時代に応じて様々に変化しています。最初のそれは、ある意味ではモーセが授かった「石版」かもしれません。パウロの時代には「手紙」が主要なメディアとして活躍しましたし、ルターの頃には「活版印刷」が開発され、それが主要なメディアになりました。近現代にはラジオやテレビも宣教の場として大いに活用されました。そして21世紀の今、新しいメディアとしてインターネットが我々に与えられています。こう考えると、インターネット時代というのも、長い歴史で見れば特別なことではないのだと思えます。「手紙」の時代にはたとえば「それをいかに相手に届けるか」という問題が生じたでしょうし、「活版印刷」の時代にも、それまでにはない様々な問題が生じたでしょう。「ラジオ・テレビ」がその黎明期に様々な試行錯誤を繰り返したのも、皆様よく知ることかと思います。ですから当然、インターネットが新たな宣教手段として与えられた今、我々には解決すべき多くの問題もまた、与えられているのかと思います。

それは単にインフラ面での問題にとどまりません。メディアというのは文化や文明を作り上げる主要媒体です。この媒体が大きく変わる時、当然社会も変わりますし、人の心のあり方も変わります。ですから、インターネットを単なるインフラとして捉えてしまうと、戦況としては大きな過ちに陥る恐れがあります。

想像してみてください。まったく同じ文言でも、それを「石版」を通して読むのと、「手紙」を通して読むのと、「本」を通して読むのでは、受け取る側の受け取り方は変わってくると思いませんか? まして「ラジオやテレビ」を通して伝えられるのなら、もっと受け取り方は変わりませんか? ですから当然、「インターネット」を通して伝わるメッセージは、他のメディアでのそれとは大きく異なるんです。

「石版」はおそらく、多くの人がそれを直接は読めません。誰かが読んだのを伝聞して伝わってゆきます。「手紙」ならそれよりも直接読む人は増えますし、本ならさらに増えます。さらにこれらのメディアの利点は「保存され、何度も繰り返し読むことができる」という点です。「ラジオ・テレビ」は繰り返し性という点ではやや劣りますが、その代わり同時性という大きな利点を持っています。同時刻に広範囲の大人数に一気に情報を伝達することができます。この利点が強調されてこれらは「巨大な媒体=マスメディア」とも呼ばれますよね。

「日刊キリスト新聞クリスチャンプレス」のトップ画面

インターネットは、これらのすべての利点を兼ね備えたメディアです。テキストベースのメッセージであれば、保存され、繰り返し読まれることもできますし、そのテキストは瞬時に、同時に、世界中の人たちが共有することができます。音声や動画を用いても、マスメディアのような「繰り返しが効きにくい」という欠点は解消され、何度も繰り返し視聴することが容易になりました。このウェブマガジンは「手紙」に近い媒体ではありますが、紙の手紙とは違い、簡単に複製することができますし、それを世界中のどこへでも瞬時に転送することもできます。でもだからこそ、紙の手紙よりも一つ一つのメッセージが大切にされない傾向はあるのかもしれません。大量に情報が流れるようになり、一つ一つの情報の重みはなくなってきています。

このように、メディアの変化により、人の情報に対する姿勢は明らかに変わりました。ですからたとえば同じ「十戒」を伝えるにしても、モーセの時代のそれと、現代のそれとでは、人々の受け取り方がまったく違うんです。モーセの時代なら一回のアプローチだけでみんなそれを覚えたかもしれませんが、現代ではもしかしたら100回はアプローチしないと覚えてもらえないかもしれません。

しかし、ここで宣教において大切なことは、人々の受け取り方が変わっても、神様が発しているメッセージ自体は変わっていないということです。宣教の本質は時代が変わっても、媒体が変わっても変わることはないんです。娯楽やニュースは、受け取る人々のニーズに合わせて、発信される内容も変わります。しかし、福音宣教はそれらとは違い、受け取る人のニーズが変わろうが性質が変わろうが、発信されるメッセージ自体はまったく変わりませんし、変えてはならないんです。「変わらない神様」と「変わりゆく人間」、このギャップを計算に入れつつメッセージを伝えることが、インターネット時代の宣教に不可欠なのだと思います。

面白い時代に生かしてもらっているなと、日々楽しみつつ試行錯誤しています。

 


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