アシジの聖フランシスコ物語 1


小平正寿(カトリック田園調布教会協力司祭)

この物語は歴史上の真実の物語であります。それは12世紀のイタリアのアシジから始まります。

ヨーロッパはまさに中世の真っただ中にあり、そこを支配していたのは享楽的な雰囲気であって、人々はそれに酔いしれていたのです。

さて、その頃、イタリアの町、アシジにはピエトロ・ディ・ベルナルドーネという名の豪商がおりました。彼は織物商であり、日本的に言えば呉服屋でしょう。それもたいへん高価な、いわば金持ちたちが喜び、競って買いに来たくなるようなものばかりを売りさばいていたのです。

当時、そのような高価な絹織物はイタリアでは生産しておらず、フランスにまで買い出しに行かねばなりませんでした。ですから彼は何度も馬に乗ってフランスにまで足を運んでいたのです。

そんな旅のある日、彼はプロヴァンス地方出身のピカという美しい女性に出会い結婚するのであります。

やがて彼女は身ごもり、臨月も迫ってきていました。いよいよというとき、下女たちの世話の中、出産のときがやってきましたが、なかなかの難産です。そんな時、旅の途中の不思議な人がこう言ったのです。「近くの馬屋で出産しなさい」と。言うとおりにすると楽に子供が生まれたのです。司祭の立ち合いの中、すぐに洗礼が行われ、洗礼名を洗礼者ヨハネにしたのです。夫のベルナルドーネはフランスに織物の買い出しに行っていて留守でした。1182年のことでした。(次に続く)

小平正寿著
『イタリア アシジからの伝言―聖フランシスコとともに歩く』
(パピルスあい刊)
定価:1900円+税

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