教誨師


教誨師という仕事を知っていますでしょうか。
刑務所や少年院などの更生施設で収容者の宗教上の希望に応じて所属する宗教・宗派の教義に基づいた宗教教誨活動を行う民間の篤志の宗教家のこととあります。宗教教誨活動って何? と思われる方も多いでしょう。かくいう私も教誨という言葉はよくわからなかったので調べました。そもそも教誨とは教え諭すことだそうです。そこから転じて受刑者に対して、道徳をわきまえた正しい品性や道徳心、道義心を育成する目的として教育することということのようです。ですので、宗教教誨活動というのは、宗教によって正しい品性や道徳心を養うために聖職者が受刑者を訪問し、面接や講話などをすることで受刑者の心を安らかにするということではないかと考えました。なぜ、そんなことを考えたかというと、今年(2018年)2月に亡くなられた大杉漣氏が最後の主役を演じた「教誨師」という映画を見たことで興味を持ったからです。

大杉漣演じる牧師佐伯保は、まだ就任6カ月の新米教誨師です。彼は月2回拘置所を訪れ、6人の死刑囚と面会します。無言を貫き、問いかけにも一切答えようとしない鈴木(古舘寛治)。気の良いやくざの組長吉田(光石研)。年老いたホームレス進藤(五頭岳夫)。おしゃべりな関西出身のおばちゃん野口(烏丸せつこ)。家族思いで気の弱い小川(小川登)。そして17人もの人を殺めた自己中心的な若者高宮(玉置玲央)。

独房で孤独な生活を送る彼らにとって佐伯は、格好の話し相手であり、理解者であるべき人です。佐伯にとっては、彼等が罪としっかり向かい合い、悔い改めることで残り少ない生を充実したものにしてもらいたいと思っています。しかし思い通りにはいきません。

ほとんど教誨室での面会シーンに徹した台詞劇です。場面転換もすごく少ない作品です。この映画はそれぞれの人間の裏面性を描いています。なぜ終身刑になるほどの事件を起こしてしまったのか。そこにはそれぞれの生活環境がありました。けれどもその人たちには悔い改めはありません。
この映画の本当の見どころは、もしかすると、佐伯牧師にあるのかもしれません。死刑囚と向き合い、死刑囚と話をすることで、この人物がなぜ牧師になり、なぜ教誨師になったのか佐伯自身の話がすごく深いのです。
詳しい内容は、ここではあえて話をしません。ぜひ映画館で見てください。淡々としながら、この佐伯牧師の心のひだに触れることができると思います。

中村恵里香(ライター)

10月6日(土)より有楽町スバル座、池袋シネマ・ロサほか、ロードショー
公式ホームページ:http://kyoukaishi-movie.com/

監督・脚本:佐向大/エグゼクティブプロデューサー:大杉漣 狩野洋平 押田興将/プロデューサー:松田広子/撮影:山田達也/ 照明:玉川直人/ 録音:山本タカアキ/美術:安藤真人
出演:大杉漣/玉置玲央、烏丸せつこ、五頭岳夫、小川登、古舘寛治、光石研
製作:TOEKICK★12、ライブラリーガーデン、オフィス・シロウズ
2018年/日本/カラー/114分/スタンダード(一部ヴィスタ)/ステレオ
配給:マーメイドフィルム コピアポア・フィルム

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