神さまの絵の具箱 14


末森英機(ミュージシャン)

冬眠して、おおいなる春を待ち望むのは、預言者の言葉たち。ひとの暦の上の神の暦。ミルクと蜜が流れる河をつくる約束の地へ、パレスチナへの道には、預言者たちの言葉が敷き詰められている。奴隷に生まれた者、奴隷になった者、奴隷にされた者、ひとが発見しうるのは歴史が悪夢であるということだけだったけれど。逃れの町をめざす。大虐殺(ポグラム)の轍(わだち)に。アブラハムは今でもなお、主のみ前に立って、ソドムとゴモラを救うべく、とりとめのない、とりなしを申し開きしている。つかのまであるわたしたち。いつでも、呼吸(いき)をするのも不思議なほど、ひとの歴史につくり主が賭けた富である。わたしたちは永遠の宝である。いまにも落ちそうな、黒いリンゴのようなこの星で、だれが不平など言えよう。口はささやく、心はつぶやく、ときどき海を思い出すように。つくり主のために生きなかった、この時間に。涙の種をまこうとして、塩を刈る、愛をそれでも物語ろうとする。ひとの罪責と、こぼれる花のような神の恩寵。奴隷の身で、光の層を飛ぶこと。ちいさな火花が、強い炎に変わるように。「待ち望む者は幸いである」(ダニエル12:12)。


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