エンドレス・えんどう 2


〈縁〉の話に戻りましょう。半年ほど前、僕は雑誌『カトリック生活』に「遠藤文学は、今も働き続ける」というテーマの原稿を書くため、鎌倉の黙想の家(殉教者修道院)に泊まり込んだのでした。その時に出逢ったのが当直に入っていた土屋至さん(シグニス・ジャパン会長)で、ひょんなことで会話は弾み、1ヶ月後にはネラン神父様(2011年帰天)の意思を継ぐ『けやき欅』という大船(神奈川)の素敵なバーで再会。ワインを飲みつつ語り合い、誘っていただいたのが、このウェブマガジン『AMOR』の最初の編集会議でした。

さっそく出向いた会議当日。地下鉄丸ノ内線・本郷三丁目駅を出て五分ほど歩き、指定場所のビルに行くと『パピルスあい』の文字が目に飛び込んできました。その瞬間、僕の心はビビッときらめ煌く何かをとら捉えました。実は『カトリック生活』の編集者さんから「遠藤周作さんとも親しかったご夫婦で良い本を作っている出版社があるんですよ」と伺ったことがあり、その名前をずっと心に留めていたからです。

 運命の働きを感じた僕は、開いた扉の前で「すみませーん!」と幾度か声をかけましたが、沢山の本が置かれた部屋の中に人の気配はありません。(居ないかな…)と引き返すと、離れのオフィスから顔を出した女性が僕を部屋に招き入れてくれました。入るや否や、口ひげを蓄え眼鏡をかけたおじさんが弁当を食べており、「まあ、どうぞ」と僕を向かいの席に座らせました。お2人がAMORにもかかわるパピルスあいの鵜飼さんご夫妻でした。初対面にもかかわらず3時間ほど、ご主人と僕は語らいました。

cimg2102 「遠藤さんが描いたメッセージを心のどこかで求めている人は多く居るはずだが、どうすれば届けることができるのだろうか?」。ご主人のこの言葉に、僕は深く頷きました。編集会議までに時間があったので、「しばし駅前の名曲喫茶『麦』に行ってきます」と腰を上げようとしたところ、ご主人は一枚の紙を、僕に手渡しました。

(服部剛/詩人)


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