パルマ・イル・ジョヴァネ『キリストの洗足』
稲川保明(カトリック東京教区司祭)
『キリストの洗足』という作品はティントレットにもあり、以前にも紹介しました(アート&バイブル22)。このパルマ・イル・ジョヴァネ(Palma il Giovane, 1548頃~1628)も興味深い手法で描いています。
ヨハネ福音書13章1~11節の「イエス、弟子の足を洗う」というエピソードはよく知られています。最後の晩餐のあと、イエスが食事の席から立ち上がって上着を脱ぎ、手ぬぐいを取って腰にまとい、たらいに水をくんで弟子たちの足を洗い、腰にまとった手ぬぐいでふき始めるのです。
【鑑賞のポイント】
(1)作者は、この洗足のエピソードを、ペトロ、ヨハネ、ヤコブの3人との様子に絞って描いています。イエスは右手の人差し指で天を指し示して御父の御心についてペトロを諭しています。
(2)ペトロは体をそむけて、「どうか、私の足など洗わないでください」と抵抗し、キリストの受難を忌まわしいものとして受け入れない様子を示しています。ヨハネは「せっかく、先生がこうおっしゃるのだから、素直に洗ってもらってはどうですか?」とペトロを説得しているように見えます。
(3)ヤコブはテーブルの席に座っていますが、ペトロがぐずってイエスを困らせているのではと様子を見守っています。
(4)この絵の右のアーチの向こう側に、ゲツセマネでの祈りの様子が描かれており、3人の弟子、ペトロ、ヨハネ、ヤコブがイエスにそば近くで祈るように言われつつも、疲れと満腹感から眠り込んでいる様子が描かれています。