アシジの聖フランシスコ物語 3


小平正寿(カトリック田園調布教会協力司祭)

 

学校から帰ってからの少年フランシスコはよくお店のお手伝いをしていました。目がくりくりしていて、可愛く、愛想の良いフランシスコはすっかりお店の看板息子のようになっていました。

そんなある日のことです。優雅で裕福なお客さんでいっぱいのお店には似合わないようなみすぼらしい身なりをした人が入ってきて「何かお恵みくださいな」と叫んでいるのです。フランシスコのお父さんは嫌な顔をして追い払おうとしています。子どものフランシスコもついあおられて同じようにしようとしました。物乞いの人は悲しそうに出ていきました。

しばらくして(それが数分のことか、直後のことか、はっきりしていませんが)フランシスコに声が聞こえました。「あの人は主の愛ゆえに物を願ったのにあなたは追い出した。もしあの人が貧しい身なりでやってきた主キリストでも、あなたは同じように追っ払たのか?」。突然、フランシスコはお店に置いてあった箱からお金をつかむと一目散に追いかけました。追いつくと、びっくりしているその人の両手いっぱいに施したのです。(つづく)

小平正寿著
『イタリア アシジからの伝言―聖フランシスコとともに歩く』
(パピルスあい刊)
定価:1900円+税


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