町にジングルベルの音楽が鳴りはじめ、夜にはイルミネーションが飾られるころになると、ぼくにとってはいつも思い出すカレンダーがあります。それは燦葉出版社にいたときにつくった『天使トニーの一番すてきなクリスマス』というアドベンントカレンダーです。クリスマスまで、1日、1枚ずつ下ろして物語を読んでいきます。
天使トニーがかみさまから「一番すてきなクリスマス」をさがしてきなさいと言われて、小高い丘に降りてきたところから物語がはじまります。町の一番にぎやかなところにさがしに行ったものの、トニーは騒がしくて退散してしまいます。そこで、こんどは人々が生活している静かな町の方へ飛び回ることにしました。すると、ひっそりとした児童公園で一人の女の子が手紙をポストに入れるところに出会います。女の子は北の国のサンタさんへ手紙を届けようとしていました。しかし、住所がありません。そこへゆうびんやさんがやってきて、その手紙を受け取って行きました。女の子の手紙には「交通事故でお父さんが天国へ行ったので、去年の家ではなく、こっちの家に来てください」と書かれていました。トニーは、住所もないのにサンタさんへ届けられるのか不思議に思いました。
トニーは町を飛びながら、老人ホームや病院でのクリスマスを知ります。そして、おばあさんがしせつの子ども(いろいろわけがあって自分の家で暮らせない子ども)3人を家に泊まらせてあげて、クリスマスをお祝いしていることも知りました。
女の子へは、ゆうびんやさんがサンタさんになり、自分でチョコレートを買ってクリスマスプレゼントを贈ります。「あったかいこころを、めぐまれない人にプレゼントして、みんなでいっしょによろこぶ、これがすてきなクリスマスだったんだ」と天使トニーは、はっきりとわかりました。天使トニーは「一番すてきなクリスマス」を見つけて、かみさまに報告するために空へとのぼっていきました。
ぼくは、毎年このカレンダーを飾りながら、ほんとうのクリスマスってなんだろうかと思うのです。今年も、そのことを考えながらお祝いしなければと思います。
みなさんも、こころのあたたまるクリスマスをお迎えください。
『天使トニーの一番すてきなクリスマス』燦葉出版社(文・吉田よりこ 絵・楢喜八)〈現在品切れ中です〉
(鵜飼清/評論家)
いいお話ですね。
殺伐とした世の中。
しかしこの時期は町中がキラキラしています。
本当の幸せってなんだろう。
こんなお話を読み語りながら
子どもたちと交わす会話が
大事だと思いました。