江藤文夫の仕事 1983−2004


『江藤文夫の仕事 1983−2004』
江藤文夫著 影書房 2006年 349ページ 3,736円+税

江藤文夫さんの言葉を拾っている。

この書のなかの「E・W・サイードを悼んで 2003.12」という文章のなかから

「『アラブ系のムスリムのアメリカ人で、自分が敵方に属していると現在感じていないような人物を私は一人も知らない』とは、『アメリカについての考察』の冒頭の文である。そういう敵意や疎外や差別は、私と私の周辺にその根をもたないか。逆に、幸いにして私は戦後初期に、戦時日本を敵として見る目をもつことによって、愛郷・愛国のよって立つ基盤を自身の内部にとらえることができた。当然のことながら、サイードがアメリカを一色として見ないように、戦時・戦後の体験を通して、日本を一色として私も見ることはない。さらに、サイード流に言えば、合衆国は日本ではなく、そして(ありがたいことに)日本は合衆国ではなく、その一部でもない。しかもそのなかに、(ありがたくないことに)という諸要素も含まれるかも知れない」

「サイードのように二国を内側にもつ苦渋と、それを避けることのない姿勢の上に築いた鋭利な目を私はもたないが、同時代を呼吸する人間の一人として、その苦渋を少しでも分けもとうと、いま思い続けている」

イスラエルとパレスチナの出来事を知らされる現代において、同時代を呼吸する人間として、江藤さんにどのような自分の立場からの説明をしたらよいのかを、ずっと考え続けています。 

鵜飼清(評論家)

鵜飼清(評論家)


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