雪の花 ―ともに在りて―


現代は、医療が発展し、死に至る病はほとんどないといわれていますが、2020年中国で見つかったコロナウイルスによって私たち現代人もウイルスによる罹患の恐ろしさを体験しました。そんなことをふと思い出し、流行病に敢然と向かい合った江戸時代の実在の医師の話の映画『雪の花 ―ともに在りて―』をご紹介します。

江戸時代末期。死に至る病として恐れられていた疱瘡(天然痘)が猛威を振るい、多くの人命を奪っていました。

福井藩の町医者で漢方医の笠原良策(松坂桃李)は、患者を救いたくとも何もすることができない自分の無力を嘆いていました。自らを責め、落ち込む良策を、妻の千穂(芳根京子)は明るく励まし続けます。

あるとき、大聖寺藩の町医者、大武了玄(吉岡秀隆)と出会います。大武了玄は蘭方医で蘭方のすごさを教えられます。これまで漢方こそ唯一の医学と信じていた良策は、目からうろこの思いで、どうにかして人々を救う方法を見つけたいと思います。

そこで藩医の息子・半井元冲(三浦貴大)に相談したところ、京都の蘭方医・日野鼎哉(役所広司)を紹介され、教えを請うために京都へ足を運びます。

鼎哉の塾で疱瘡の治療法を探し求めていたある日、異国では種痘(予防接種)という方法があると知りますが、そのためには「種痘の苗」を海外から取り寄せる必要があり、幕府の許可も必要とわかります。実現は極めて困難な道ですが、絶対に諦めない良策の志はやがて、藩主・松平春嶽、そして幕府をも巻き込んでいきます。

藩主から種痘の苗を手に入れ、京都で種痘所の開設が始まります。

その後、私財をなげうって種痘の苗を福井に持ち込みますが、天然痘の膿をあえて体内に埋め込むという種痘の普及には、さまざまな困難が立ちはだかります。

詳細は、ぜひ映画館に足を運んで観てください。鎖国政策をとっていた江戸時代、庶民のため、患者を救いたい一心で東奔西走する良策の姿には、常に自分の道を探し、瑞あらを律していく潔さがあります。医療とは何なのか、人の生きる道とは何かを示唆してくれる作品です。

中村恵里香(ライター)

1月24日(金)全国公開

公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/yukinohana

公式X@yukinohana2025

監督:小泉堯史/脚本:齋藤雄仁、小泉堯史/音楽:加古隆/原作:吉村昭「雪の花」(新潮文庫刊)

出演:松坂桃李、芳根京子、三浦貴大、宇野祥平、沖原一生、坂東龍汰、三木理紗子、新井美羽、串田和美、矢島健一、渡辺哲、益岡徹、山本學、吉岡秀隆 役所広司

2024年製作/117分/G/日本/配給:松竹/クレジット:©2025映画「雪の花」製作委員会


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