『TOUCH/タッチ』


ある年齢になると、自分の人生を振り返り、何かやり残したことはないかと考えるといいます。死は必ずどんな人にもやってきます。死を意識するようになると、人生を振り返るものなのかもしれません。ふと、そんな時私はどうするのだろうかと考える映画に出会いました。

コロナウイルスの世界的流行の始まった頃、アイスランドでレストランを経営するクリストファー(エギル・オラフソン)は、医師から初期の認知症との診断を受けます。医師に「やり残したこと」をすすめられた彼は、突然誰にも伝えず、店を休み、旅に出ることを決意します。

旅だった先は、クリストファーが50年前に大学生活を過ごしたロンドンです。1969年、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの学生だった頃、よくぶらついていた場所に足を向けます。

クリストファー(パルミ・コルマウクル)は、当時の世相を反映したかのように過激な政治思想から学業を捨て、

Lilja Jonsdottir / © 2024 FOCUS FEATURES LLC

近くにあった日本食レストランNipponで皿洗いの仕事を始めます。その店の店主の娘ミコ(Kōki)戸で愛、恋に落ちますが、自分の気持ちを隠し、働き続けます。日本の言葉や文化に触れ、上司でミコの過保護は父親でもある店主髙橋(本木雅弘)や従業員と強い絆を築いていきます。

クリストファーは、やがてミコの愛情を勝ち取りますが、ミコの父親の目を盗み、愛を深めていく2人の恋愛は長く続きませんでした。ミコから広島で彼女の家族が体験した恐ろしい出来事を打ち明けられた直後、何の前触れもなく日本食レストランNipponは閉店しり、髙橋とミコは忽然と姿を消していました。

その後、クリストファーはアイスランドに戻り、妻をめとり、レストラン経営者となります。

コロナの蔓延でロンドンでもホテルが閉鎖になる寸前にホテルマンによって日本食レストランNipponの従業員の

Lilja Jonsdottir / © 2024 FOCUS FEATURES LLC

居場所がわかり、そこからミコの住所を知り、一路日本に向かいます。東京から広島へと旅は続きます。

さて、この後は観てのお楽しみです。クリストファーは、ミコと会えるのか、そしてなぜ忽然と姿を消したのか、そこには、深い当時の事情が関わってきます。心を揺さぶるような愛の物語です。50年経ってもなお、愛する人を探し続けるクリストファーの姿には訴えるものがあります。

この物語の裏には、被爆者の当時の姿があります。何十年もの間2人を引き離した大きな力にも触れています。

監督のバルタザール・コルマウクル は、「広島という場所から力強さを感じた。すべて破壊された場所に立つというのはとても衝撃的な経験だった。広島を見れば爆弾が使われた後どうなるのかは一目瞭然だというのに、現在の私たちがいまだに爆弾を使う選択肢をちらつかせていることに驚きを隠せない」と語っています。

ぜひ映画館に足を運び、さまざまに訴えかけてくる心揺さぶられるこの作品を観てください。

中村恵里香(ライター)

1月24日全国ロードショー

公式サイト:https://touch-movie.com/

公式X@touch_movie0124 #映画TOUCH

スタッフ

監督:バルタザール・コルマウクル /原作・脚本:オラフ・オラフソン /キャスティングディレクター:奈良橋陽子/製作(プロデューサー):マイク・グッドリッジ

キャスト:エギル・オラフソン、Kōki、パルミ・コルマウクル、本木雅弘、奈良橋陽子、ルース・シーン、中村雅俊

製作年:2024 年/製作国:アイスランド、イギリス/字幕翻訳:稲田嵯裕里 /配給:パルコ ユニバーサル映画/上映時間:122 分/Ⓒ 2024 RVK Studios

 


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