ぼくのお日さま


雪が積もる田舎街に暮らす小学6年生のタクヤ(越山敬達)は、すこし吃音(きつおん)があります。タクヤが通う学校の男子は、夏は野球、冬はアイスホッケーの練習にいそがしい。

ある日、苦手なアイスホッケーでケガをしたタクヤは、フィギュアスケートの練習をする少女・さくら(中西希亜良)と出会います。「月の光」に合わせ氷の上を滑るさくらの姿に、タクヤは、心を奪われてしまいます。

一方、コーチ荒川(池松壮亮)のもと、熱心に練習をするさくらは、指導する荒川の目をまっすぐに見ることができません。コーチが元フュギュアスケート男子の選手だったことを友達づてに知ります。

荒川は、選手の夢を諦め、東京で生活していた頃からの恋人・五十嵐(若葉竜也)の住む街に越してきました。さくらの練習をみていたある日、リンクの端でアイスホッケー靴のまま、さくらが滑るフィギュアのステップを真似て滑ろうとします。何度も転ぶタクヤを荒川は見つけます。

タクヤのさくらへの想いに気づき、恋の応援をしたくなった荒川は、スケート靴を貸してあげ、タクヤの練習につきあうことになります。 しばらくして荒川の提案で、タクヤとさくらはペアでアイスダンスの練習をはじめ、やがて大会に参加することになります。

このあとは皆さんが映画館に足を運んで観てください。決して劇的な展開のある作品ではありません。澄み渡った空気のとともにお日さまがすべてを照らすようなおおらかで、柔らかな光を感じます。それぞれの未来に続く道筋に、私たちの方から胸を開き、溶け合いたくなるような気持ちになってしまう作品です。特に2人の子どもたちのスケートシーンは、2人の息づかいやそのときの2人の気持ちが見るものに温かで緩やかなカーブで問いかけているような作品です。スケートを滑ることに喜びを感じる2人とともに、慈愛に満ちたまなざしで指導するコーチの荒川の存在は珠玉です。

奥山大史監督の前作『ぼくはイエス様が嫌い』もそうでしたが、最後のシーンは、静かな中に私たちに感動を与えてくれます。なにに感動したのかは、言葉で言い表せませんが、静謐ななかに私たちに訴えるものがたくさんあるように思える作品です。

中村恵里香(ライター)

9月6日より8日までテアトル新宿、TOHOシネマズシャンテにて先行上映

9月13日よりテアトル新宿、TOHOシネマズシャンテほか全国公開

公式ホームページ:https://bokunoohisama.com/   

スタッフ

監督・撮影・脚本・編集:奥山大史 /製作: 渡部秀一 太田和宏/プロデューサー: 西ヶ谷寿一、西宮由貴/照明: 西ヶ谷弘樹/録音: 柳田耕佑/美術: 安宅紀史/装飾: 松井今日子/衣裳: 纐纈春樹/ヘアメイク: 寺沢ルミ、杉山裕美子

出演:越山敬達、中西希亜良、池松壮亮、若葉竜也、山田真歩、潤浩ほか

2024年製作/90分/日本/製作: 「ぼくのお日さま」製作委員会、製作幹事: 朝日新聞社、企画・制作・配給: 東京テアトル、共同製作: COMME DES CINÉMAS、制作プロダクション: RIKIプロジェクト/© 2024「ぼくのお日さま」製作委員会 / COMME DES CINÉMAS


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

14 − thirteen =