松橋輝子(音楽学)
復活祭に合わせて、その喜びを歌う聖歌が教会の内外で歌われていることでしょう。復活節は復活の主日から聖霊降臨までの50日間を指します。今回は復活の聖歌、そして復活節の中でも大きな祝日として祝われる「主の昇天」の聖歌を紹介したいと思います。
まず、復活の聖歌として親しまれている「よろこべ今日ぞ」。この原曲はフランス語の聖歌であり、明治時代にフランス人宣教師が編纂した聖歌集に、すでに掲載されています。当時、聖歌集の歌詞作成において、日本の伝統的な音節構成である五七による短歌形式を基本としていました。1907年の聖歌集の歌詞を見てみると、それに限らないこともわかりますが、日本語の語感を意識しながら、復活の意味を叙事的に語っていることがわかります。
主の昇天は、復活したキリストが40日にわたって使徒たちに現れ、神の国について話されたのち(使徒言行録1・3参照)、天に上り、神の右の座についたことを記念します(主の昇天とは? | カトリック中央協議会 )この日に朗読される使徒言行録には、以下のようにあります。
使徒言行録 1:7-12
イエスは言われた。「父が御自分の権威をもってお定めになった時や時期は、あなたがたの知るところではない。あなたがたの上に聖霊が降ると、あなたがたは力を受ける。そして、エルサレムばかりでなく、ユダヤとサマリアの全土で、また、地の果てに至るまで、わたしの証人となる。」こう話し終わると、イエスは彼らが見ているうちに天に上げられたが、雲に覆われて彼らの目から見えなくなった。イエスが離れ去って行かれるとき、彼らは天を見つめていた。すると、白い服を着た二人の人がそばに立って、言った。「ガリラヤの人たち、なぜ天を見上げて立っているのか。あなたがたから離れて天に上げられたイエスは、天に行かれるのをあなたがたが見たのと同じ有様で、またおいでになる。」使徒たちは、「オリーブ畑」と呼ばれる山からエルサレムに戻って来た。この山はエルサレムに近く、安息日にも歩くことが許される距離の所にある。
この祝日に歌われる聖歌を一つ紹介したいと思います。「オリベト山より」。原曲は、Christus fährt auf mit Freudenschallというドイツ語の聖歌で、ボーネ(Heinrich Bone, 1813〜1893)によって作詞されました。日本でも1918年に出版された『公教會聖歌集』に〈オリベトやまより〉として掲載されて以来、歌われ続けています。
原曲の歌詞はキリスト昇天を祝うにあたってとても味わい深いものです。
1.キリストは、喜びの響きとともに、
天を通って父のもとへ昇る。
地上での彼の働きは成就し、
天の門が開かれている。アレルヤ!
2. 私たちの父の御国である天で、
彼は神の右の座につく。
彼の栄光と威光は
すべての考えを超える。アレルヤ!
3.いと高き玉座におられる
復活した人の子がたたえられますように。
主を仰ぐ私たちを、主は目にとめてくださいます。
私たちには彼の助けが尽きることはない。アレルヤ!
4.そこで主は私たちの仲介者でおられます。
全世界よ、そのことを喜べ。
そうすれば、天の御国で彼と会いまみえるその日は、
喜びにあふれたものとなるだろう。アレルヤ!
日本語の歌詞に注目してみると、第1番、4番はドイツ語歌詞の第2番、第4番をそれぞれ踏襲する形で、イエスが昇天の後に父の右の座についたこと、そして天において人々が主と相まみえることが歌われます。第2、3節は、先に引用した使徒言行録1:11(太字部分)に基づいた歌詞となっています。
復活、主の昇天、そして聖霊降臨祭を迎えるなかで、聖歌の歌詞を通して、聖書の物語、キリストの歩みを味わってはいかがでしょうか?