Doing Charity by Doing Business(9)


山田真人

前回の記事では、光塩女子学院の学習過程を例に挙げ、特別活動の中でNPOとともに支援国について知り、それに自分たちが主体的に取り組めるようになっていくプロセスを紹介しました。チャリティ精神を育むためには、まず既に活動している人と出会い、その人とともに活動する中で自分にもできることに気づき、他者とそのスキルを分け合っていくことが重要でした。そして、自然にもっと社会の為に役立てられるのではないかという期待感が出てくると、わくわくした気持ちになり、チャリティの心が育っていくということに触れました。

こうした流れから、今回は「自分ごと―あなたごと―社会ごと」という流れについて考えることで、ボランティア学習の重要な側面に迫っていければと思います。この三つの段階は、どんな優秀な起業家にも現れる流れです。例えば、書道に出会い、この美しいデザインが誰でも簡単に手元で作れたらいいのにと考え、ハードウェアの構想を友達に話し、そこから誰でも創作ができるパソコンを作り上げ、社会に受け入れられていったのが、アップルの創始者スティーブ・ジョブズのストーリーです。私が光塩女学院で出会った生徒の中には、絵を書くのが好きという趣味を私に共有してくれることで、その絵を商品のラベルにして販売し、多くの人々に購入してもらったというストーリーを持っている生徒がいます。

NPO法人せいぼのボランティア募集では、以下のような点を挙げています。

  • イラスト、デザインが好きな方
  • 貧困や国際問題に興味がある方
  • 文章を書いて発信するのが好きな方
  • 誰かのために自分のスキルを活かしてみたい方

画像① 光塩女子学院の生徒がデザインし、販売した商品

上記の点は自分のことなので、最初は「自分ごと」です。しかし、それを誰かと共有することで「あたなごと」になり、さらにより多くの人と共有するための「社会ごと」に応用できることに気づきます。NPO法人せいぼでは、この段階の感覚を感じることができた人は、全て「社会人」だと考えています。社会人になった人は、その記念として形に残る活動をすることが、とても重要です。上記で挙げた生徒は、画像①のようなデザインを描いてくれました。

実際には、一人から始まったデザイン案が、三つの案を生み、三つとも取り扱ってみることにしました。上記のような商品ができると、実際に販売することで支援に繋げたいという思いになっていきます。NPO法人せいぼのブランド、Warm Hearts Coffee Clubでは、売り上げの100%がマラウイの給食支援に繫がるビジネスモデルを持っています。この流れに代理販売学校として入り、独自のデザインによるブランディングで、具体的な支援活動に繋げることができます。販売する日は、11月に毎年行われている校内の親睦会となり、共通の目的ができました。そこで自然発生していくのが、Team Workです。以下のような班編成が、チーム内で出来上がりました。

  • 全体統括リーダー(高校2年生)
  • 校内広報班(校内でのポスター掲示や事前お知らせの作製)
  • 販売班(当日の販売シフトの調整、コーヒーの作製の補助)
  • ブランディング班(ドリップバックのブランドデザイン作製)

画像② 光塩女子学院の校長、烏田先生の高円寺教会でのご挨拶

販売日当日を迎える前に、光塩女子学院の近くにあるカトリック高円寺教会で活動の紹介を実施し、実際に教会のバザーでも販売をすることになりました。ここで注目したいのは、上記の「自分ごと―あなたごと―社会ごと」は、複数形になっていくことで、さらに進化を遂げていくということです。一人だった「自分」がクラスメイトととともに「自分たち」になり、それを発信する先が親睦会に集まる自分の親などの身の回りの「あなたたち」へ、そしてそれだけに留まらず、教会という共同体にいる普段はあまり話さない第三者への発信、つまり「社会ごと」の一部にアクセスできるようになります。もちろん、生徒が社会に出ていく上では、社会の先輩として先生が支援をしてくれました。(画像②参照)

こうして、カトリック学校の生徒が社会に出ていくために、最初の土台として教会共同体が存在してくれました。このように徐々に、教会と学校、さらには教会と社会が繋がっていく段階が築かれていければと思います。次回はこの土台を基に、生徒たちがどのような展開を将来的に考えているかについて、現在の取り組みも紹介しつつ、お話していきます。

 

山田 真人(やまだ・まこと)
NPO法人せいぼ理事長。
英国企業Mobell Communications Limited所属。
2018年から寄付型コーヒーサイトWarm Hearts Coffee Clubを開始し、2020年より運営パートナーとしてカトリック学校との提携を実施。
2020年からは教皇庁、信徒、家庭、いのちの部署のInternational Youth Advisary Bodyの一員として活動。

 


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

3 − 2 =