古谷章
妻・雅子と二人でイングランド北部のレイク・ディストリクトとスコットランドの山旅に行ってきた。昨今の円安(£1=約180円)とウクライナ問題に伴う航空券をはじめとする諸物価の高騰は残念なことだったが、コロナ禍で久しく海外に行けなかっただけに待望の旅であり、レンタカーを駆って(総走行距離1649マイル=約2650km)大いに楽しんできた。実は51年前には一人で、30年前には家族旅行で巡ったところも少なくないのだが、この地の魅力は尽きることがないと改めて痛感した。その「日誌」と拙い感想を記したい。
22時30分発のドーハ行きカタール航空QR807便に搭乗すべく成田空港へ。事前にウェブチェックインも済ませていたのですぐに手続きは完了。そして飛行機は定刻に出発した。
10時間半ほどのフライトの後、予定より1時間も早い朝3時ころに(ドーハ時間=日本時間-6時間)ドーハに到着。そこからの乗継便のエジンバラ行きQR029便はほぼ定刻の7時40分に出発し、7時間半のフライトで予定通り午後1時過ぎ(英国夏時間=日本時間-8時間)に到着した。成田を離陸以来、22時間半ほどかかったことになる。
入国審査も税関も簡単に通過し、空港内のレンタカー会社「ヨーロッパカー」のオフィスに行った。事前予約しておいた車本体に加え、カーナビやフルカバーの保険の手続きなどを終えて3時半ころにレンタカー会社の駐車場から出発。最初は半ば恐る恐るの運転だが、左側通行なのでその点は安心だ。
まずはエジンバラ南東24マイルほどのファラという村のはずれの街道沿いにあるホテルを目指す。飛行場からエジンバラの「外環道」ともいえる高速道路を経由してから国道を走ること30分余で周囲には畑の広がるだけのホテルに到着した。
朝、宿の外に出てみると肌寒い。酷暑の東京とは大違いでうれしいくらいだ。朝食を済ませ、いよいよ本格的なドライブの出発だ。
ウォルター・スコットが称賛したという眺めの良い丘「スコッツ・ヴュー」や由緒ある修道院などをいくつか眺めながら南下し、スコットランドとイングランドの「国境」を越えた。そしてハドリアヌスの長城の遺跡を公開しているチェスター博物館を見るなどしてからレイク・ディストリクトに向かった。
レイク・ディストリクトには登山や観光の基地となる大きな町がいくつかあるが、最も静かで感じの良い町と称されるケズウィックのゲストハウスに夕方到着した。確かに町の中心はレストランや土産物屋が軒を連ねて賑やかだが、一歩外れると落ち着いた雰囲気のこぎれいな街並みが広がっていた。
前夜にだいぶ雨が降り、朝もどんよりとした空模様だ。ゲストハウスで供される「ブリティッシュ・ブレックファースト」を食べてから出発。景色の美しいとされるドライブコースを走り、途中、アンブルサイドやウィンダミアなどの町にも立ち寄ったが、なるほどどこも観光客であふれかえっていて、街中を見物する気にもなれなかった。ピーターラビットゆかりの見どころなどもあるのだが、雨が断続的に降り続いていることもあり割愛した。「景観の美しいコース」と称される山道をドライブしたが、雨のため眺める景色がはっきりしないのは残念だ。それでも途中で車を降りて雨具を着て山道を少し歩きまわってみるなどした。
午後になり、荒涼とした山の中の険しく細い道路を走って峠越えをしていると雨はますます激しくなった。すれ違う車もほとんどいない山道を運転したのちにゴスフォースのホテルに到着した。
(つづく)