森の中のレストラン


1年間の自殺者は2021年で2万1000人を超えています。特にコロナ禍では女性の自殺が増えているといいます。人はなぜ自死を選ぶのか、生きにくい時代、死にたいと思う人も多いと思うのですが、そこで立ち止まって生き抜くという選択肢はなかったのだろうかと思ってしまうのは私だけでしょうか。そんな時、ゲートキーパーという言葉を知りました。それは、自殺者の発するサインを受け止め、その人に対して適切な対応をし、自殺願望者の支援をする人のことをいいます。私たちはゲートキーパーにどうやったらなれるのか、一人でも死を考える人を止めることはできないのか、そんなことを改めて考えさせられる映画『森の中のレストラン』をご紹介します。

三つ星フレンチレストランのシェフ京一(舟ヶ山哲)は、妻・香織(奥菜恵)と一人娘と幸せな暮らしをしていました。ある日家族3人で出かけたところで、娘は、ビルから飛び降り、自殺した少年の下敷きになり死んでしまいます。最愛の娘を失った京一は森の中で木の枝にロープをかけて首をつって死のうとしますが、足を滑らせて失敗してしまいます。そこに通りかかった猟師の欣二(小宮孝泰)に助けられます。京一の介抱をしながら、欣二は「なぜ死ぬ?」と問いかけます。

数年後、京一は、欣二の所有していたレストランを任され、働いていました。京一の料理は評判となり、遠方からの客も絶えませんでした。一方で、森の中には京一のように命を絶とうとしてくる者もいます。そんな人に本人が希望する“最後の晩餐”を京一は提供しています。

そんな京一のもとに絶望を抱えた少女・沙耶(畑芽育)が訪れます。沙耶は、京一の差し出す料理を食べ、森の中に入っていきます。翌朝、京一の飼っている犬・マイロが自分でひもを引きちぎり、いなくなっているのに気がつきます。京一と欣二はマイロを探します。マイロは沙耶に寄り添っていました。沙耶を助け出し、レストランに連れ戻ると、欣二は沙耶に京一のレストランでアルバイトをしないかと提案します。

沙耶はレストランでのアルバイトを始めますが、レストラン周辺では若い沙耶の姿は様々なことが起こります。後は、ぜひ劇場に足を運んで観てください。なぜ京一は森の中で最後の晩餐を作り続けていたのか、京一は、妻とどうなったのか、沙耶の感じた絶望とは何か、そして結末は……。

人は一人では生きていけません。苦しみながら生きていかなければなりません。でも、気がついていないかもしれませんが、あなたのそばにいつもあなたを見ている人がいるよ、そこに気がついたら、死を選ばなくても生き抜けるかもしれません。そんなメッセージのある作品です。

中村恵里香(ライター)

20221119日(土)よりK’sシネマほか 全国順次公開

公式ホームページ:https://mori-rest.com/

スタッフ

監督:泉原航一/プロデューサー:大谷直哉/脚本:幸田照吉/撮影:高橋慶太/照明:丸山和志/録音:原川慎平/美術:橋本 蓮/装飾:小林美智子/編集:木村悦子/VFXスーパーバイザー:オダイッセイ/音響効果:大塚智子/音楽:荒川 仁/助監督:金田健/スタイリスト:浜辺みさき/ヘアメイク:五十嵐良恵/キャスティング:飛岡秀行/フードコーディネート:はらゆうこ/制作担当:今井暖菜

キャスト

船ヶ山哲、畑芽育 、森永悠希、染谷俊之、奥菜恵、佐伯日菜子、谷田 歩、小宮孝泰

2022年/日本映画/ビスタサイズ/カラー/5.1ch92分/制作プロダクション:ザロック/配給:NeedyGreedy、フルモテルモ

©森の中のレストラン製作委員会2022


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