『あずかりやさん』
大山淳子:著、ポプラ社、2013年
定価:1,540円 213ページ
あき(横浜教区)
人はだれでも人に言えない悩みや思い出があります。
その悩みや思い出に絡んだ品物は、時に目の前から遠ざけて離れたいと思うこともあります。
そんな人たちが訪れる小さなお店が「あずかりやさん」。
今日は、大山淳子著「あずかりやさん」をご紹介します。
東京、明日町こんぺいとう商店街の西のはじにある「さとう」と書かれた藍染ののれんをくぐると、そこは「あずかりやさん」。
別にさとうを売っているわけでも、店主がさとうさんというわけでもありません。
昔、和菓子屋だった名残で、店の中にはショーケースがあります。
「あずかりやさん」は、1日100円でなんでも預かってくれます。
店主は目が見えないので、預ける方も見られずに安心して預けることができます。
店主は、相手の声と名前。 肌で感じる様子から何年たっても相手を見誤ることはありません。
この本は、そんな品物をあずける人とあずかる店主のやりとりを通して進むショートストーリーを集めたものです。
おもしろいのは、そんなやりとりを店ののれんや、ショーケース、猫の口を介して話が進んでいくところです。
にんげんではない第3者の目を通して感じるにんげんの様を描いているところだと思います。
この本を読んで思ったことは、人は気づかない間に、お互いに関係しあいながら生きているんだなぁということ。
そして、「あずかりやさん」を通して、人の心のちょっとした傷が癒えていくところが面白いと思いました。
小さな出来事を通して、にんげんの機微を伝えてくれる、切なくも温かい本でした。
気軽に手に取り読める本でした。
栃木の本屋さん「うさぎや」から始まり、「この本を一人でも多くの人に読んでほしい」との思いからオリジナルカバーがかかった装丁になっています。
続編も、あと3冊でています。
会社の帰りに次を買って読んでみよっと。